みかんのつぶつぶ
DiaryINDEX|past|will
陽射しも風も、すっかり春らしい日だった。
病室で、一日穏やかな時を過ごしていた。 横たわっている時間が長くなった彼は、 天井をみつめて、何を思っているのだろう。
婦長さんに、子供達へ話すタイミングに迷っていることを打ち明けた。
「手術が終わってから、先生にご相談されたら如何ですか?その方が、手術の結果によって今後の治療法もお話しがあるでしょうから」
即答だった、さすがだ。 おっしゃる通りだと感心してしまった。 感謝しています、婦長さん。
昨日、彼の会社へ診断書を届けに行ってきた。 Eさんとの会話でのことを彼に話すと照れくさそうに笑っていた。
「いまでも思い出しますよ。危険物の免許が取れたと報告しにきた姿を。 ちょうどこの会議室にいた時で、嬉しそうな顔で入ってきたんですよ。 なかなか一発合格は難しいのに、頑張りましたよねー」
新たに任された仕事で、必要だった資格だ。 オープンに向けて連日泊まりこむ程多忙で、 その合間に勉強をしていた姿を覚えている。 やっと準備万端これからという時に、病に倒れたのだ。
ふっと彼に目をやると、涙が眼の端に落ちていた。 色んな想いがあるのだろう。 Eさんの言葉で、蘇えってきたのだろう。
私は、彼の涙に気づかないふりをして過ごした。 泣きたいときには、もっと泣いて欲しいと思うから。 寂しいときには、もっと甘えていいのにと願うから。
今度、聞いてみよう。 生まれ変わっても、 また私を、 奥さんにする? って。
|