りとるのひとりごと。
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軽い気持ちだった。
実家に残してきた服や本をちょっと取りに行ってこようと思った。
息子を母に託し、車を走らせること約30分。
実家に着き、車庫のシャッターを開けたら。
いつもは空の車庫に車が入っていた、しかも見知らぬ車。
ひょっとして。
来てるかも。
まだ見ぬ父の愛人。
ガスや水道を使っている音がする。やっぱり誰かいる。
一瞬、躊躇した。
だがシャッターを開けた音を聞かれたかもしれない。
ええいままよ。
乗り込んでやれ。
鍵でドアを開け、ずかずか入っていった。
不思議なくらい落ち着いていた。
台所に彼女はいた。
私を見てかなり動揺していた。
まあ格好も格好だったし(下半身下着一枚だった)。
ちょっと強烈な第一印象だったな、うん。目に焼き付いちゃったぞ。
父の愛人は2人、うち1人とは会ったことがあった。 今回は会ってない方の愛人。 ストーカー行為、自殺未遂をした人だった。
私はてっきり気が狂った女だと思っていた。
今日見た限りではちょっと違っていた。
歳は母と同じくらいだろう。
しかしここ3日高熱で寝込んでいたらしく、やつれていた。
2時間ほど話した。 私は荷物をまとめて動き回っていたが。
私がいる間、数分ごとに彼女が口にした言葉。
「ごめんなさい」 「申し訳ない」 「許してね」
何度も何度も言われ、私は正直戸惑ってしまったくらい。 「いいんですよもう」「気にしないで」なんて一言も言わなかったけど。
彼女に対しては長年恨み辛みを抱いて生きてきた。
すぐに許せるというものではない。
だが・・。
何だか「もういいや」って気になってきた。
「もう済んでしまったことはアレコレ言っても仕方ないので」 私はそう言った。
目の前の、私を苦しめたはずの人が哀れに思えてきたのだ。
思えばこの人も父に苦しめられた被害者なんだ・・って。
そうじゃないかもしれないけど・・そう思った方がいい気がした。
話している途中、彼女は泣き出して「ちょっとごめんなさい」と 離れたこともあった。
「涙は女の武器」なんてバカなことを一国の長が言っていたが、 武器として彼女は泣いたんじゃないと思いたい。
帰り際、彼女に携帯の番号を渡された。 「何かあったら、私正直に全部話しますから」と。
とりあえずは父と母がちゃんと話し合うことが必要だ。
車を走らせながら思った。
「今日のエンピツネタは決まりだなー」
こんなことしか考えられない自分。
涙の一つも出やしない。
ダンナが死んでから泣きすぎたな。ちょっとタンク枯れ気味。
何とかしなきゃな。何とか。
今晩はなかなか寝付けそうにない。
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