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目が覚めると9時過ぎ。イガワさんは既に起きていた。 確か自分が寝入ったのは朝の5時頃。その後風呂に入っていたはず。 寝てないのか、この人は。
「ああ、やっと起きた。KGくん歯軋りするんだねぇ」
もしやそれで眠れなかったのだろうか。 いやいや、寝屁の可能性も捨てきれないが、指摘されなかったことが若干不安。
ホテルで和洋折衷バイキングな朝食を済ませるとアベさんからイガワさんにメールが入った。 昨日落としたはずの携帯が、この大阪で昨日の今日というのにまさか見つかったのだろうか。 しかもそのメールは通信の不具合か何かで読めなかったようだ。 部屋に迎えに来てくれたアベさん、手に携帯を持っている。 勿論ロケット団のストラップ付き。
「どこにあったと思う? 昼に行ったお好み焼き屋さんやて〜」
昨日何度か知らない番号からの着信があったが取らなかった。 留守電も入らなかったので用事がないものと思っていたのだが、 どうやら拾った店員さんが、取り敢えずリダイヤルに入っていた番号にかけていたようだ。
アベさんの案内でのんびりと南港付近を散策。 イガワさんは念願の串カツも食べ、自分はそこそこに買い物もして満足。 帰りの時間が迫ってきたので小走りに駅へ移動。 イガワさんも同じ時間帯だったので、荷物を入れていたコインロッカー前で慌しくお別れ。 自分も走ってバスターミナルに向かった。
走っても走っても知らない景色、というか何となく見覚えがある景色。 以前も迷った所のような気がする。 自慢にもならないが、梅田と新宿は何度来ても迷わなかったことがない。 特に今回は地元民のアベさんがいるからと思って地図すら持っていない。 途中で二人に道を尋ね、聞いた通りに走っているのにやはり違う場所。 その二人は嘘を言っていた訳じゃない。確かに柱には「阪急三番街」と書いてあるのだから。 「阪急三番街は」なんて訊かずに、ちゃんと「バスターミナルは」と訊けば良かった、それだけのこと。
出発時間になっても辿り着けないので諦め、項垂れながら歩く。 アベさんに「乗り遅れた」とメールを送ってからまた別の人に道を尋ね、 目的地に着いたのは発車10分後だった。
窓口でおっちゃんと「もうバス出ましたよね」「出たねー」なんて会話。 こんなはずじゃなかった。手にしている乗車券は最早ただの紙切れなのだ。 次の便が取れなければ今から急いで空港に行くか、神戸からバスに乗るかどちらかを選ばなければ。 考えたくないが、最悪このまま一泊ということも。 明日の仕事はどうする、何て言い訳をすればいい。
「んー、今回だけ特別に次の便に変更してあげましょ。夜行だけど」
「発券手数料だけ貰うね。100円」
思いがけないおっちゃんの計らいに一瞬耳を疑った。 ありがとうおっちゃん、これで明日も仕事に行ける。
さて、次の便まで6時間もある。 取り敢えず身軽になりたくてコインロッカーに荷物を放り込み、財布を見ると100円玉がない。 混み合っている窓口で両替を頼もうかと思ったが、荷物を入れたままその場を離れると盗られるかも知れない。 だからといって荷物を出すと、相当人がいるのですぐ塞がる。 どうしようかとまごまごしていると見ず知らずのおっちゃんが声をかけてきた。 「何や、500円か? それとも1,000円か?」 有り難いことに両替してくれた。ありがとう、おっちゃん。
待合室を出てメール着信に気付き、返信しようとしていたらアベさんに肩を叩かれた。 ついさっきターミナルでバスの後姿を見送ったところで、電車に乗る前にメールに気付き、引き返してくれたそうだ。 そのバスに自分は乗っていなかった訳だが。 「まさか迷うとは思わなかった」とアベさん。 自分も迷うつもりはなかったと苦笑い。 イガワさんからもメールが入る。 「一緒に乗り遅れたら良かったかも〜」と。
「大阪を出るまでは自分の責任」と言うアベさんに最後まで付き合ってもらい、見送りまでしてもらった。 ありがとう、アベさん。
この二日が本当に楽しく、そして短く感じた。 思い返すと悪いことは一つとしてなかった気がする。 アベさんの携帯が見つかったのも、バスの乗車券を変更してもらえたのも、 おっちゃんに両替してもらえたのも、アベさんが引き返して来てくれたのも、 全てあのビリケンさんのお陰だったのだろうか。 幸運の神様と書いていたし、これはご利益かも知れない。
そういえば乗車券変更の際に「隣は多分女性」と言われた。 自分の席は一番後ろの独立していない座席。 満席状態だったので、窓口のおっちゃんなりに気を遣ってくれたのだろう。 最後までご利益が続くなんて素晴らしい。
バスに乗り込んだら、隣には体格の良い男性が。 そこまでは面倒見きれないか、ビリケンさんも。
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