♡信頼関係♡ |
2004年04月20日(火) |
人間は信頼という目に見えない絆で結ばれているのだと思う。 少なくとも私は、その存在なしでは心の扉を開く事ができない…
昨夜は強烈な情緒不安定に駆られ、その不安感を制御する事ができず、自分の全存在に対する憎悪の気持ちは募る一方で、極限にまで達した。涙が次々と溢れ出てくる…私には、その理由も処理法も解らなかった。自分が自分である事に激しい憤りを感じ、消し去りたい気持ちで いっぱいになってしまった…尋常なはずがない。 一体どうしちゃったのだろう。。
真っ暗闇の中、眠りに付く事が怖かった。 どんな恐怖が襲ってくるのか分からないから… だから、昨夜は夜を徹した。 そう、待たなくても必ず朝はやって来るんだ。 そして、昨夜もまた私は一人だけ取り残されてしまった。
確か今日は履修登録の締切日だった。 ギリギリ間に合うので、一つでも何か授業を取っておこうと思い 立った。本当は卒論だけに集中して頑張ろうと思っていたんだけど… じっとしていられない衝動が私を焦燥感に駆り立てたのだ。 けれど、私の場合、慎重性を欠いた行動はたいてい失敗に終わる。
きっと、授業科目の選択が悪かったんだ。 今日はちょうど「心理療法」についての講義だった。 サラサラの黒髪でロンゲのマニアっぽい若い男性教師が担当だった。 いや、担当なんて誰だっていいんだけど、内容があまりにも客観的 すぎて、実際に情緒不安定に駆られている最中の私にとっては キツイものだった。
心の問題について淡々と述べていく教師が何だか信じられなくなり、 自分がその場にいる事自体が完全に間違っているような気がしてきて、 涙を必死で堪えながら、授業中にも関わらず、大講堂の中を一人 走った。扉は大講堂の後方にあり、私は前方へ座っていたので、 みんなの視線を真っ向から受けた。もちろん、途中で抜け出したのは これが初めてだった。
行き場を失った私は、大学内の聖堂へ向かった。 両側のステンドグラスが日光を透して光り輝いていて、幻想的な空間を 作り出していた。今ならきっと素直に心を開けるような気がした。 ゼミの先生に会いに行こう。卒業延期を決断した昨年の6月以来ずっと 顔も見せられずにいたけれど、今なら心の内を全て話せるはずだ。
先生の研究室へ行くと、その時間と次の時間が「授業」になっていた。 このまま何もせずに帰宅する事はできなくて、ずっと先生を待ち続けていた。ちょうど階段の所で先生と出くわす事ができ、軽く挨拶を交わすと、色々と尋ねられた。卒論の事…病状の事…でも、急に言葉に ならない感情が涙と共に込み上げてきて… 先生は「部屋へおいで」と言ってくれた。
二人きりになる事が怖かったけれど、不思議な事に先生とは 何でも話せた。最初は何を聞かれても「分からない…」としか 答えられなかった。 全ての感情において抽象的すぎて、言葉に表す事ができなかったのだ。 自分が何に怯えているのか、自分の何が憎いのか、嫌いなのか… 先生の顔を見る事さえできず、ただうつむいて涙を流し続けていた。
私にとって先生は卒論指導者だけど、私が先生と話す時はいつも卒論には全く関係のない話題ばかりだった。人生、恋愛、人間関係、性格、趣味…私的な内容でも平気で話してくれた。私を気遣ってくれている感じもなく、ごく自然に親友との会話のような雰囲気だった。対話の回数はほんの少しなのに、その一つ一つがとても深く、 信頼を感じずにはいられなかった。
涙の量は言葉を交わすごとに増えていき、私はどんどんありのままの 姿に曝されていった。でも、恥ずかしくなんてなかった。 先生なら大丈夫…先生にとって、私の話はきっと幻滅するような 内容ばかりだったと思う。先生は私の能力を認めて下さっていた。 でも、私はそれらを全て否定した。 ただ、自分を押し殺して努力する事によって逃げていただけなんだと…
先生ならきっと分かってくれると思っていた。そして、受け入れて くれた。咎めなかった…軽蔑もしなかった… 「人間を理解する事は難しいですね。」 「人間関係が怖い。でも、それは不信感のせいではなくて、私は 相手をあまりにも信じ込んで、全てで接してしまいがちなので、 相手に負担をかけそうで怖いのです。 結局は、自分が傷付く事が一番怖いんですよね。」 「拒絶されてしまった時に、割り切れる気持ちも大切ですよ。 誰もが誰も、解り合える関係にあるわけではないのですから…」
廊下がガヤガヤしてきた。次の時間は先生の研究室でゼミがあるん だ!!もう30分も経過していた。早く帰らなくちゃ…でも、もっと お話していたい。すると先生は「ちょっと待っててね。」と言って 研究室を出てゼミ生たちに「今日は中止。もう帰っていいよー。」と、 サラリと言った。えっ?!大事なゼミなのに…ひょっとして、 ボイコットしちゃった??確か前回は、私の方が必修の授業を サボってしまったけれど…
そして、再び椅子に座り、何事もなかったかのように対話は続いて 行った。私は戸惑いを隠し切れなかったけれど、真剣に私を受け止め ようとしてくれている先生に対して、嬉しさと恥ずかしさでいっぱいに なった。先生は一方的に私の話を聞くだけではなく、自分の体験談や 素直な気持ちも自分から話してくれた。教師と学生ではなく、人間と 人間の関係だった。一体なぜこんなにも打ち解けて話し合えるのかが 不思議だった。
次第に涙が笑顔に変わっていき、視線もいつの間にか先生の顔を見てた。そして、お互いに何を言っても気まずくならない信頼関係が生まれてきた。先生は決して驕らず、いつも自然体で飄々としている男性だった。ある意味、掴み所がなくて、敬遠されがちでもあるけれど、 真に先生を慕う学生たちとは、このような信頼関係を築く事ができるのだ。私はその一人になれた事を嬉しく思い、そんな先生に対して感謝の気持ちでいっぱいだ。私に少しだけ自信と勇気をくれたから… 心底から救われたよ。
精神科へ通っている友達も先生のゼミ生だった。 そして、高校時代に片想いだった英語の先生がよくちょっかいを出して いて、私がヤキモチを焼いていた若い英語の先生もそうみたい!! 私も本当はシスターのゼミ生だったんだけど、途中でシスターが転勤 され、今の先生に変わったのだ。これも運命だったのかなぁ… 縁って、すごいなぁ…私もずっと先生に忘れないでいて欲しい。
気が付いてみれば、かれこれ3時間も話し込んでいた。 私の両目は徹夜による寝不足と泣き過ぎで、カラカラに枯れていた。 でも、笑顔だった。3時間前の私は廃人寸前だったのに… やっぱり信頼関係で結ばれた人間の温もりじゃないと癒されない… 重たい会話だったかもしれない… でも、真実を語り合っただけだよ。 お互いに受け入れ合える環境だったから、語り合えたんだよ。
「ちょっと入試広報部へ行く用事があるから…」と言われたので、 もう帰るように促されたのかと思っていたら、そのまま行っちゃった。 ちょっとルーズすぎない?!学生一人を置いて研究室を去るなんて。。 私は勝手に部屋の中を荒らしたり盗み見なんてしないけど… これも信頼関係の証拠なのかなぁ。。お留守番??
しばらくして戻って来て、再び対話が始まった。それが最後となった。 「こうやって長く話していると、やっぱり疲れちゃうのかな??」 私はハッとした。いつものように顔が引きつっていなかった!! 「いいえ、自分の気持ちをありのままに話しているだけですから。 ある意味、そんなに親しくない友達と話している時の方が、言葉を 選んでしまったり、抑制しなくちゃいけないので疲れてしまいます。 先生とは大丈夫です。」それに対して先生は、 「僕はズボラなO型人間だから、言っても仕方がないと思う相手には、 敢えて何も言わないんだ。マメじゃないしね。」と、言った。
そして最後に「よし、じゃあ、そろそろ帰ろっか。」と言って、帰りの身支度をしながら、先生の生まれ故郷である佐賀県のモナカを1つ下さった。先生は生まれ故郷を愛している。その人にとって、落ち着ける 場所があるという事は生きがいにも繋がる。今週末に静岡と千葉の親戚の家へ行く事を先生に伝えると、先生も一緒になって喜んでくれた。
二人で一緒に研究室を出た。先生は鍵を閉めていた。 先生は私のお父さんと同世代なのにまるで等身大の親友のようだった。どこまで解り合えたのかは分からないけれど、少なくとも二人の間の 距離は3時間前よりも近づけたよ。私の思い込みなんかじゃないよね? 廊下を並んで歩き、途中で分かれ目に差し掛かった。 先生は、「じゃあ、またねー。」と言って手を振ってくれた。 私は「ばいばい」や「さよなら」よりも、 「またね」という言葉が大好きだった。 これが最後じゃないんだって、安心できるから…
何だか今日は少しだけ心の整理ができたような気がします。 今度会う時までには、卒論を少しでも進めておかなくちゃ!! これで、スッキリした気分で親戚の家へ行けそうだぁ(*^_^*)♪ そして、再び帰って来てからは、気持ちを新たに頑張るぞぉp(*^0゚)ノ
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