**Secret**..miho
元カレ
2003年12月20日(土)
私は悪女なのかもしれない…

今日は元カレと会う日だった。その名目は「クリスマス」。
なぜ別れた恋人と今更デートしなくちゃいけないんだろう。
私にはもう相手に恋愛感情がない事は明らかなのに…
すべては元カレのため…そのためにデートをした。

元カレは現在、東京の赤坂で働いている
いわゆるエリートである。
元カレとは高一から付き合い始め、大学で遠距離になり、
私が病気になった事をきっかけに、元カレに対する愛情は
だんだん薄れていった。
別れたにも関わらず、元カレは今でも一途に私だけを想い続けている。
ひょっとしたら、元カレの中では、
私たちはまだ恋人同士なのかもしれない。

元カレは今朝の始発便で東京を発ち、岡山まではるばるやってきた。
10時半に駅の喫茶店で待ち合わせをし、そこでココアを飲んだ。
相変わらずの装い、口調、しぐさ…
もちろん私は、この久々の再会に胸をときめかす事はなかった。
それとは対照的に、元カレは満面の笑みを浮かべて、
とても嬉しがっていた。

それから駅前のデパートでウィンドーショッピングをし、
第一の目的地へ向かうために、バスターミナルで
バスが来るのを待った。
元カレが提案したその行き場所とは、バラ園だった。
雪が舞ってこんな冷え込んだ気候の中で、バラ園を散策するの??
そもそもバラなんて季節外れなんじゃないの?!
色々と反論はあったが、私はおとなしくそれに従った。

40分ほどバスに揺られてたどり着いた場所は、
まったくひとけのない広々とした敷地だった。
この一体どこがバラ園なの?!
元カレは入り口で入場券を2枚買った。
「半額でいいですよ。」
案の定、バラの花はほとんど咲き終えた状態で、
あたり一面が枯野だった。
これは、いくら半額でもひど過ぎる…。

雪が霙に変わり、雨宿りをするためにレストランへ入った。
そこで昼食を済ませた後、仕方なく私たちは再び駅前に戻る事にした。
バス停へ行くと、次のバスはなんと1時間後…
時間をつぶすための場所もなく、寒さに凍えながら
1杯のホットレモンジュースを飲みながら、
ひたすらバスを待った。
私は一体こんな僻地で何をしているんだろう…
あまりのわびしさに、元カレもしくじったとかなり意気消沈していた。

再びバスに揺られ、その温かさと気持ち良さに
吸い込まれて、二人とも居眠りをした。
その後、途中下車をして再びウィンドーショッピング。
雪と霙と雨に打たれ、寒さに凍え、歩き疲れて、
すっかりヘトヘトになってしまった…
まだ相手が恋人か親友であれば、楽しいひと時であっただろうに。
なにせ相手は典型的なB型の自己中男だから…
最初は合わす事もできたが、だんだん元カレのペースに
イライラが募ってきた。

6時になり、駅前のホテルの最上階へディナーを食べに行った。
いかにも高級そうなホテル…その最上階でディナー?!
しかも鉄板焼…ステーキだよぉ!!
絶対に高いって!!
さすがにここは遠慮をして、違う場所にしようと提案したが、
元カレはボーナスをもらったから大丈夫と自信たっぷりであった。
メニューを見て唖然。。全てコースメニューで、お値段は万単位。
もちろん、二人とも一番安い1万円コースをオーダーした。

1人1万円のディナーなんて、生まれて初めての経験だった。
確かに夜景もお店の雰囲気もメニューも全て最高だったが、
1食1万円?!と思うと、もったいなくて
素直に喜んでもいいのか複雑な気持ちだった。
これで相手が本命の恋人だったら…
でも、元カレはかなり満足そうだった。
私と目が合うたびに「おいしい?」と尋ねてきて、
私は「うん」と笑顔で返す。
おいしいのは本物だが、笑顔は半分偽りである。
顔が引きつってきた…

お腹がいっぱいで苦しい…
このまますぐに帰っていいのか、
食い逃げじゃないかって不安に思ったが、
その後すぐに元カレは、快く私を駅のホームまで見送ってくれた。
こんな形だけのデートで本当に良かったのだろうかと、
罪悪感に駆られたが、元カレはそれでも喜んで手を振ってくれた。
別れ際に、クリスマスプレゼントを渡された。
それは、ある宝石店の高級そうなパッケージだった。

帰りのバスの中でそれを開けて見ると、
真珠とダイヤモンドのネックレスだった。
お花とハートの形がとてもプリティだった。
私はこれを受け取った時、どんなリアクションだったのだろう。
嬉しかった…でも、心底から喜んではいなかったはずだ。
むしろ複雑な感情に困惑していた。
後から、受け取るべきではなかったとさえ思った。
元カレは私を喜ばすために、自分の気持ちを
伝えるために私にこれをプレゼントした。
こればかりじゃない。
今までずっと高価な贈り物攻めだった。
時には北海道から突然押しかけてくる事もあった。
元カレは私への直向な想いを示すために、
お金も時間も惜しまない人だから…。

しかし、私はそれに完全に応える事はできないのだ。
なぜなら、もう元カレに対して愛情を注ぐ事ができないから…
どうしてこんなにも自分の事を愛してくれている人に対して、
再び愛情を抱く事ができないのだろう…
私たちの関係は、ただ一つ、私の元カレへの愛情のみが
欠如しているがために成り立たないのだ。
元カレにとって、こんなにも不条理な事があっていいものなのか…
しかも、元カレは私の気持ちに気付いてはいない。
このまま元カレのペースに飲み込まれてしまっていては、
私も元カレも幸せになんてなれない。

バラ園の隣にハウジングプラザがあり、二人で見て回った。
そして元カレは言う。
「夢のマイホーム、いつか必ず建てるからね!!」

以前に親友が私に言った。
「元カレと結婚したら、玉の輿だね!!」

…お金があれば幸せになれるの??
本当の幸せって何??男女の愛情って、一体何なの??
理想像って??そのたどり着く行き先はどこなの??
何が一番大切なんだろう…
私は今まで、相手が喜んで満足さえしてくれればそれで良かった。
そのためには何でもした。たくさんの我慢もしてきた。
でも、果たしてこれでいいんだろうか…。

元カレはその後、高速夜行バスで東京へと帰って行った。
今日二人が会っていた時間はたったの10時間。
そのためだけに、元カレはお金と時間を費やして私に会いに来た。
それに見合う事を、私は元カレにしてあげられたのだろうか…
元カレは幸せだったのかな…
そもそも、一体何が幸せなの??
「私にできる事なら何でもするよ。」
私はだんだんこの言葉を素直に表す事ができなくなってきている。
その言葉があまりにも無責任で非情である事を
知ってしまったから…
これからどうなっていくんだろう…
どうすればいいの??




m a i l



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