Sun Set Days
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新しい部屋は、駅から離れている。 最寄の駅まで、歩いて大体20分くらい。もし公共機関を使うのならば歩いて5分ほどのところにバス停があって、そこから5つ目の停留所が最寄駅になるという感じのところ。 この間まで住んでいた部屋は駅まで徒歩3分だったので、随分と不便なところにきてしまったような感じもするのだけれど、悪くない。 周囲は随分と静かな住宅街で(近くに結構な大きさの団地もある)、夜には人気がなくなり静けさに包まれる。何かを落としたらその音が四つは先の交差点まで響きそうなくらいに、静かな感じだ。風が吹き抜けて行く音だけがするような。
引っ越してきてすぐの夜に、部屋の周囲を散歩してみた。目的はコンビニを探すためだったのだけれど、自分の部屋を中心にして、1時間と少しぐるりと四角形を描くような範囲で歩いてみた。コンビニは3軒あった。ただ、深夜までやっているような店はスナックや焼き鳥屋以外まずなかった。ただ静かな家々が、人気のない中学校があるだけだった。夜の闇に覆われた小山があり、その小山の中腹ほどまで住宅がせり上がって建てられている。 後は、それなりに大きな川と、その川沿いの比較的大きな通り。その通りは夜でも車が結構たくさん走っている。もう随分と寒い。考えてみれば12月なのだし、すでに季節はすっかり冬に入っているのだ。
グレーのダッフルコートのポケットに両手を入れたまま、見知らぬ道路を、細い路地を、交差点を歩きながら、こんな通りが存在していることは数ヶ月前には想像すらしていなかったんだよなとあらためて思っていた。たとえば、転勤が多いことをあまり嬉しいことではないと思っている人は少なくなくて(この間乗ったタクシーの若い運転手も、「えー、そりゃあ大変ですねえ」「僕は絶対にだめです。旅行ならいいですけど、いろいろなところに住むとなったら」と話していた)、どこかではまあ確かにそうなのだろうなとは思う。けれども、異動という環境の変化で、ひとところに住んでいるのであればおそらくは知ることのなかった通りを歩くことになったのだと思うと、ちょっとだけわくわくする。おもしろいよなと思う。
けれどもまあ、そういうのは本当に人それぞれだ。そういうのが好きな人もいれば苦手な人もいる。ただ、少なくとも、いろいろなところを渡り歩いて行くことは、性にはあっているし、旅行ももちろん楽しいけれど、ある程度の期間住んでみるのもまったく悪くないと個人的には思う。 それに、住むことによって、継続的に歩くことによって、親しく思えるような路地が増えていくということも事実ではあるわけだし。
散歩をしていると、親しい路地とちょっと距離のある路地というものがやっぱりあるような感覚になることがある。 歩いていてしっくりくると言うか、なんだか好きだなと思える道路は確かにあって、そういうところを歩いているとつい微細な変化にまで目がいくような気がする(木々の色や、電灯に照らされた長い影や、夜の音)。逆に、そうじゃない通りを歩いているときには、妙に長く感じたりもする。そして、不思議なことに、散歩の回数が増え、繰り返し歩いて行く中で、あまりしっくりこない道も意外といいなと思えたりするときがきたりもするのだ。 そういうのって、妙に不思議だ。そのときの心持ちで様々な通りが親しいものに見えてきたりするのだから。
いまの部屋の周囲はまだ十分には歩いていない。 たぶんこれから歩いて行くことになるのだと思う。 そして、まだまだこれからも、きっと別の街にも、そういう通りがたくさんあるのだろうなと、考えたりもするのだ。
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お知らせ
随分と冷え込んできました。
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