Sun Set Days
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2002年11月17日(日) |
『いつか記憶からこぼれおちるとしても』+いろいろ |
『いつか記憶からこぼれおちるとしても』読了。江國香織。朝日新聞社。
96年や97年に「小説トリッパー」という雑誌に掲載されていたゆるやかな連作短篇に、書き下ろし短篇を加えた作品集。 先日、別の本を探しに行った書店で偶然見つけ、速攻で手に取り、そしてすぐに読んでしまった。 まさか新刊が出ているなんて思ってもみなかったから、ちょっとした嬉しいサプライズだ。
ゆるやかな連作、というのはこの本の主人公たちがほとんどみなある女子高の同じクラスの少女たちで、短篇ごとにそれぞれ主人公が異なっているという意味でだ。たとえば、最初の短篇の主人公はある4人組の1人で、別の短篇では4人組のまた別の1人が主人公になっている。他にも、その4人組とは異なるグループにいる少女が主人公になっていたり、どのグループからも外れているような少女が主人公になっている作品もある。 駅の中で女性の痴漢にあうある悩みを抱えた少女の話や、親友が壊れていくのを見ているほかはない少女の話、ある旅に出ることを夢想している少女の話……いずれにしても、17歳の、女子高生たちの断片がそこには収められている。僕は男なので、おそらく女の人にはもっとこの小説は共感を得るところが大きいのだろうなと思うのだけれど、それでもそういう時期のぎこちなさや中途半端さ、そして何かをつねにもてあましているようなところは感じることができた。そのもてあまし方が、少年と少女とではやっぱり微妙に(だからこそ決定的に)異なっているのだろうなと思う。やっぱりこのくらいの年齢だと、女の人のほうが精神年齢のようなものが高い……。
文章はいつもの江國さんのもので、ひらがなもやっぱり多い。江國さんの本を読んでいると、文章の中のひらがなの割合のようなものについて、ひらがなに「おろす」漢字の選び方について、いろいろと考えてしまう。そういうところにも、個性のようなものが出てくるのだろうなと思う。これは安直なイメージだけれど、村上春樹の小説の文章を思い返してみると比喩のことが印象的だなと思えるし、江國香織の場合はやっぱりひらがなの使い方が印象的だ。あと、他には吉本ばななの場合は文章での感情の表わし方について思う。それぞれ好きな作家で、思い返すところは異なるけれど、やっぱりどこかに共通するトーンのようなもの(自分にとっての)があるのだろうなと思う。
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最近はいろいろと慌しかったりする。 ついに異動が決まり、引越しをしなければならなくなったり(横浜市在住というのはかわりないのだけれど)、3つ隣の駅に住んでいる恋人ができたり。異動も結構急な話なので、来週から引継ぎ等の準備をしなければならない。それが師走といえばまあそうなのかもしれないけれど。
それでも、この週末は満喫。遊んだし本も読んだし、映画も観た。
まず、本は2冊。ともにエッセイ集。
『タケノコの丸かじり』読了。東海林さだお。文春文庫。
いつもの大好きなシリーズの文庫の最新刊。いつもながらくすり、にやりとさせられてしまう。
『ほんじょの鉛筆日和。』読了。本上まなみ。マガジンハウス。
恋人が貸してくれた本。ananで連載していたエッセイをまとめた本。本上まなみがこういう独特の文章を書く人だとは思っていなかった。これも思わずくすりとなってしまうような内容がたくさんある。『tokyo.sora』にも出ていた人だし、個人的には結構タイムリーな感じだった。
映画も2本。
『マーサの幸せのレシピ』
新宿のタカシマヤタイムズスクエアの中にある映画館で。あの映画館はすごい! まるでクラシックでもやりそうな急勾配のホールのような映画館。デパートの12階の奥にひっそりとあって、思いがけず非日常的な空間だった。はじめて訪れた映画館だけれど、かなり印象的だった。また、そのフロアからはデパートの一角にある展望台のようなところにでることもできて、随分と寒かったその場所からは、紅葉の鮮やかな新宿御苑が思いがけず近くに見えた。
また、映画は予告編から想像していたようなものとは違ったのだけれど、劇場に入る前、初日ということで瓶に入ったジャムをひとつずつに配っていた。アプリコット味のジャムをもらう。映画館で初日の特典をもらうのははじめて。
『ショウタイム』
こちらはいつものシネマコンプレックスで1人で観た。設定はとても興味をそそるのだけれど、少し消化不良な感じ。でも、デ・ニーロはやっぱりいい俳優だと思う。
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お知らせ
Bbsにも書いたけれど、TLCのニューアルバム『3D』の4曲目と8曲目がとても好きなのです。
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