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2002年10月07日(月) ジャック・ダニエル+『いい仕事をする人の奇跡の10倍整理術・時間活用術』

「日経トレンディ」11月号を見ていたら、ジャック・ダニエルの広告があって、そのコピーにこう書かれていた。


 人口361人。信号がたったひとつしかない、小さな街。テネシー州リンチバーグ。
 135カ国で愛されているジャック・ダニエルはここでしか生まれない。


 そのページは上下2段に分かれているのだけれど、上段がジャック・ダニエルのバスト・ショット(そういう言い方は変?)で、下段がそのたったひとつだけの信号と薄灰色の空。
 渋いなあと思って電車の中でつい見入ってしまった。お酒はほとんど飲めないのでジャック・ダニエルの味もわからないのだけれど、それでもこういうのって、男心をくすぐるよなあと思ってみたり。ハードボイルドな感じだ。


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『いい仕事をする人の奇跡の10倍整理術・時間活用術』読了。ジェフリー・J・メイヤー著。黒川康正訳。三笠書房。
 すごいタイトル。
 ときどきまるで定点観測のようにこういう類の本を読んでいる。大体において、こういう本は題名に「奇跡の」とか銘打っておきながら、いざ読みはじめてみると「ここに書かれていることは奇跡でもなんでもなく当たり前のことを当たり前にこなすことだけなのである。」とか書いていて「おいおい」と(心の中で)突っ込んでみたりしてしまうのだけれど、一つや二つくらい印象に残って日々の仕事に採り入れる事柄があったりする。
 たとえば、人によっては、こういう本を読む暇があったら実際に机の整理なり無駄な時間の削減なり、実際に何かをやり始める方がずっと能率的だと言う。確かに読みっぱなしであるのならそうなのだろう。それでも、ただ漫然と整理をしたりしてみても体系的なノウハウはなかなかに生み出すことはできないだろうし、よしんばできたとしてもその構築には結構な時間がかかるだろう。ということで、それが便利な方法であるのなら、さっさとそれを採り入れた方がいいとは思う。そして、好きな作家とあんまりそうではない作家がいるように、こういう本の書き手にも好きな書き手とあんまりそうではない書き手がいることも事実だから、何冊か読んでみて、結構うまくはまる人を見つけるのも大切なことだ。ある大多数の人に当てはまるノウハウが、そのまま自分にもしっくりくるとは限らないし、あるいはそれがどんなものであれカスタマイズしなければうまくははまらないということなのかもしれないし。いずれにしても、こういうのもある程度最初は量で合う合わないを探してみることは必要なんじゃないかといまは思っている。
 ということで、たまにこういう本を読んで、なるほどと思うところを一つか二つ(場合によっては我流にアレンジしながら)日々の仕事の中に取り込む。全部はとても無理だ。1冊で1つか2つでいい。そしてそういうものをうまくアレンジしていくことで、自分なりのやりやすいやり方というものが生まれてくるのだろうし。まずは形から入るのもときにとても大切なことなのかもしれないし。

 いま仕事の方が来期の計画も佳境に入ってきたところで、様々な資料や部署の予算の作成、その他来期から新しく導入する仕組みについてどの取引先のものにするかの選定業務などなど(今日も業者3社と打ち合わせをしていた)、やるべきことはそれなりにはある。それで、その参考になるところがあればいいなと本書を読んでみたのがきっかけだった。結果としては、参考になるところはあったと思う。本書で言うと、「マスターファイル」の存在がそれに当たる。

「マスターファイル」というのは、簡単に言うと「未完了の仕事すべてについての索引」であり、体裁などは気にせずに、罫線の入ったルーズリーフに、日付と、内容を行をあけずにびっちりと書き込んでいくというものだ。アポイントメントでも作成しなければならない資料のことでも、ミーティングの予定でもいい、とにかくルーズリーフにびっちり未完了の仕事を書き込んでいく。たいていの人は長期と中期と短期、そして雑務まで入れると結構な仕事を抱えているから、そのリストは数ページに及ぶ場合もある。けれども気にせずにそういうものだと思ってどんどん書き込む。そして、その仕事が完了したら線を引いてリストからその項目を消し去る。ある程度大きな仕事の場合は、同時に関連する何本ものリストを消し去ることができるからそれはそれで気持ちがよくもある(とのことだ)。
 そして、そのリストの1ページの半分が線で引かれたら、残り半分はリストの一番新しい行に付け加えて書いていく。一番最初に書いたときの日付ももちろん忘れずに(そうすることで、いつから未完了のままの仕事なのかということが意識される)。そして、残り半分を書き写したら、その古いページはすべて線を引いて、捨てるかファイルにしてしまう。
 そうして出来上がったリストは仕事中もすぐに取り出せるところに置いておいて、随時見ていくのだ。リストを確認するのに大して時間はかからない。けれども、見返すことで常に記憶と意識がブラッシュアップされるような効果があるというのだ。もちろん、そのリストの項目についてさらに細かく計画を記載していかなければならないことも当然少なくないけれど、大切なのは大本にそういうリストがあって、それを常に見返して、未完了の仕事を明確に意識するということだ。そうすることによって受動よりは能動の仕事をすることができるようになるし、効率的に成果を挙げることができるようになってくる(さらに本書では「マスターファイル」というものについても説明しているのだけれど、まずは「マスターリスト」)。

 生産性を上げるために会社から配布されている分厚いシステム手帳にも「マスターリスト」的なページはついているのだけれど、どうもチェックリスト的な記入するべき項目が多かったりして使い勝手があまりよくはないので、ちょっとこれを試してみようと思う。必要なのは、さしあたり日付と内容だけであるし、そして半分リストが消された段階で新しい部分に書き写していくという考えが新鮮でもあるし。

 もちろん、それだけで250ページ近い本が埋まるわけではないから、本書には他にも様々なことが書いてある(主に”デスクワークの生産性”向上のための様々な方法が取り上げられている)。ただ、「マスターファイル」ひとつでも参考になったのだろうなとは思うし、それで充分だとも思う。
 折ったページのいくつか引用。


・「マスター・リスト」に書き入れる前に、保存と決定したデータをフォルダーの中に入れてはいけない。必ずリストに記入したあとでファイルすること。(72ページ)


 作家のマーク・トウェーンは、次のような忠告を残している。
「あさってでもできるようなことを、明日まで延ばすような真似は絶対にするな」
 いつでもできることなら、今すぐやってしまえということを、皮肉を込めて言ったものである。(120ページ)


 実際に必要とする時点よりも早めにデッドラインを設定する。そうでもしないと、頼んでおいたものがあなたの手元に届くのは必ず遅れるだろう。(140ページ)


 本来なら、自分がしなくてもいいようなたぐいの仕事を排除することによって、あなたは大幅に時間を節約することができるようになる。そのプロセスは「引き算による足し算」と呼ばれている。
 つまり、あまりにも多く抱えすぎている仕事の中から、不要なものを減らして、その分をより重要な仕事に取り組むための生産的な時間に加えるのである。(145ページ)


 以前、私は友人と一緒に長い列の後ろで順番を待ちながら、こう不平をもらしたことがある。
「まったく、この街には人が多すぎる」
 すると友人はそれに反論して、こう言ったものである。
「人が多すぎるのが問題ではない。問題はただわれわれが同じ時間にみんなと同じことをしていることにある」(223ページ)


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 お知らせ

 降りなれない地下鉄の駅で、やけに長いエスカレーターに乗ると、いつもこの瞬間だけ非日常みたいだとぼんやりと思います。とくに上りで、上から降りてくる人を見たりするようなときには。


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