Sun Set Days
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2002年09月09日(月) ゆかいな(?)テーマパーク

 健一と真理子は高校1年生のカップルだ。
 先月、健一が勇気を出して真理子に告白し、前から健一のことをいいなと思っていた真理子はその告白にOKしたのだった。
 けれど、2人は、はじめてのデート先にゆかいなテーマパーク「Sun Set Land」を選んでしまった。
 それでは、2人のデートがどんなものになるのかを見てみましょう……


健一:なあ、あれなんだと思う……見たことないんだよな。

真理子:うん……本当に、なんなんだろうね。ミッキーとかドラえもんを意識しているような気がするけれど、なんだかものすごく中途半端な感じだよね。

※1:2人が見ているのは、「Sun Set Land」のメインキャラクターの1人ポエムンだ。中央広場にいて、いつも不思議なポエムを観客に無理矢理聞かせることで有名なこのマスコットキャラクターは、2人が話しているようになんだかものすごく中途半端だ。

健一:あ、こっちに近づいてきた。

ポエムン:今日は、君たちみたいな可愛い恋人たちに捧げるポエムを作ったんだ。聞いてくれるかい?

健一:どうしよっか?

真理子:せっかくだから聞いてみようよ。

ポエムン:じゃあいくよ。2人のためのポエムだ。


タイトル:別れてしまえ!

別れろ! 別れろ! 別れろ!
別れろ! 別れろ! 別れろ……ボガッ!!


健一がポエムンに蹴りを入れて、ポエムンは跳ね飛ばされる。健一は空手初段なのだ。

ポエムン:な、なんだよ、乱暴だなぁ。これからよくなるところだったのに……

(蹴りを入れられた右腹を押さえながら、ポエムンは言う)

健一:なんだよそのポエムは。全然恋人たちに捧げるポエムじゃないだろう、いい加減にしろよっ。

ポエムン:しょうがないなぁ、今度はちゃんとしたのやるからさ、な、聞いてくれよ。

健一:わかったよ。ほら、早くしろよ。

ポエムン:じゃあいくよ。2人のためのポエムだ。


タイトル:裏切り


……ボガッ!!


ポエムン:ゴフゥッ!! い、いたいじゃないかっ。

健一:なんだよその「裏切り」って、すげえ気になるタイトルじゃねえかっ。もうあっち行けよっ。


(ポエムン、「ちぇーーーーっ」と言いながら転がるようにしていなくなる)


健一:な、なんだか変なのにつかまっちゃったな、ハハ。

真理子:うん……。

健一:気を取り直して、あ、ほら、あそこに何か建物がある。


「マジカルお約束ツアー」


健一:なんだろ、これ。なんだか、2人乗りの乗り物に乗っていくやつみたいだ。お化け屋敷みたいなやつなのかな。

真理子:でもおもしろそうだよ。乗ってみようか。

健一:真理子がそう言うなら。

(そして2人は「お約束ツアー」の中にはいる。2人乗りの乗り物がガタゴトとゆっくりと動いて、建物の中に入っていく。すると、普通の路地のセットが映し出されている)

健一:ん? うわー、すげーガラの悪い不良が歩いている。

真理子:何なんだろうね。

(不良が、路地を歩いている。そして、ふと立ち止まる。すると、そこには捨て猫がいて、不良がその捨て猫を拾い上げ、学ランの中に入れて頭を撫でる)

不良:お前も捨てられたのか……フッ、オレと同じだな。

健一:……。

真理子:……。

(乗り物はさらに前に進んでいく)

(今度は、なぜか激しい雨が降っている。雨に打たれた男女がいる)

男:マリー!!

女:ポール!!

(2人は抱き合うために両手をあげて走り寄って行く。そして、近づきかけたそのとき、突然車がやってきて、ポールを轢いていく。跳ね飛ばされるポール)

マリー:ポォォーーールッ!!

(マリー、跳ね飛ばされたポールに駆け寄り、抱き上げる。ポールは首がぽっきり曲がっている)

ポール:マ、マリー……ゴフッ(血を吐く)ボ、ボクはもうだめだ……あ、い、し、て、る……。

マリー:ポ……ポォォォーーールッ!!

(ポールとマリーのところだけスポットライトが当たったようになり、周囲が暗くなる。あとはただ雨の音だけがする)

健一:……。

真理子:……。

(乗り物はさらに前に進んでいく)

(今度は、教室。三つ編みで黒ぶちメガネをかけた目立たない女の子が椅子に座っている)

(その女の子が立ち上がり、三つ編みをほどき、メガネを取ると、ものすごい美少女に変わる)

健一:……ぽっ。

真理子:……ぎゅう。(健一の頬をつねる)

健一:いててて……

(そして、そんなこんなで「お約束ツアー」は終わるのだった)

健一:なんだか、さぁ……。

真理子:うん……。

健一:そ、そうだ。そろそろお腹空かない? フードコートに行こうよ。

真理子:そ、そうよね。お腹が空いたら機嫌も悪くなるものねっ。

(そして、2人は気を取り直そうと広場の横にあるフードコートに行く)

健一:さ、て、と、何にしようかな〜。


―――――――――
メニュー

ひやむぎ   500円
そうめん   550円
ピータン   70円

―――――――――


健一:メニュー、これだけなんだ……

真理子:変わってるね……

健一:しかも何でそうめんの方が50円高いんだろう。

真理子:ピータンは70円なんだね……

健一:ああ……


(それから。広場のベンチで)


健一:ごめんな。真理子。せっかくのはじめてのデートだったのに変なところ連れてきちゃってさ。

真理子:ううん、いいよ。健一君と一緒だったら、どこでも楽しいもの。

健一:でも、パンフレットを見ると、もう少しでパレードがはじまるみたいだ。いい場所も取れたし、それで今日の嫌な気分は全部帳消しといきたいな。

真理子:パレードかぁ。私エレクトリカルパレードとかすごく好きなんだー。


(パレードのはじまる音楽が向こうの角から流れてくる)


健一&真理子:あ……


 さっきの捨て猫を拾った不良と、ポールとマリー、そしてメガネを外した美少女が、タンバリンを持ってやる気なさそうに歩いてくる。

「パレードだよー」「たのしいよー」とか言いながら……

「パレードだよー」
「たのしいよー」
「みんなだいすきパレードだよー」

(パレードはそのままやる気がなさそうに遠ざかっていく)


健一&真理子:……

ポエムン:あら? お2人さん。どうしたんだい浮かない顔して? とっておきのポエムはいかが?

健一:またお前か。

ポエムン:どうです、気分をぱあっと明るくするようなポエムだよ。

健一:……じゃあ、頼むよ。とにかく、明るい感じで頼むぜ。

ポエムン:オーケー、いくよ。


タイトル:浮気のつもりが本気になって


……ボカッ!!


(今度は、真理子も一緒になってポエムンを蹴るのでした)


―――――――――

 今日の関東地方は、夜になってかなりの大雨が降った。仕事場から駅までの間でスーツがたっぷりと濡れてしまうくらいの雨。傘がほとんど役に立たないくらいだった。
 たくさんの人が駅の屋根の下で外に降る雨を見つめていて、タクシー乗り場からはゴーストタウンみたいにタクシーがいなくなっていた。
 改札口を抜けてホームに出ると、ホームからもまたかなり激しい雨を見ることができた。
 昨年も同じくらい激しい雨が降った日があったなとぼんやりと思い出した。
 本当に、叩きつけてくるような激しい雨で、そういう雨は久しぶりに見たような気がする。

 電車には、一番端にたまった水を放出する溝のようなものがあったのだけれど、なぜか一番前の車両だけは、その溝からの放出が結構遠くまで届くようになっていて(他の車両のそれはホームの方にはかからないようになっているのに)、電車の到着を待ちわびてホームぎりぎりまで前進したおじさんが、その先頭車両の思いがけない水攻撃にあって正面から水を浴びて顔をしかめていた。なんとなくおかしかった。トラップだ、とか思って。

 最寄の駅のタクシー乗り場には長打の列ができていた。
 けれども、普段とはほんの少し変わった並び方だった。
 タクシー乗り場のところには2人しかいない。
 それよりも順番が後の人は、5メートルくらい後ろの、屋根がついたところから並び始めているのだ。そして、1人乗るたびに、屋根の下から1人がタクシー乗り場の方に傘を差して行くというもの。
 そういうのって自然発生的にできた仕組みなのだろうけれど、確かに後ろの人たちは待ち時間が長くなるわけだから、その分長い時間激しい雨に打たれて濡れてしまうことになる。それを避ける意味で、かなり実用的だ。
 必要は、ときに効果的なやり方をつくるのだなと思うとこれもやっぱりおもしろかった。
 タクシー待ちの列は30人以上並んでいたから、もしかしたらそれは誰かが最初の頃につくったやり方がそのまま踏襲され続けた所作なのかもしれない。あるいは、本当にそこにいる数人がなんとなくそうしたのかもしれない。
 いずれにしても、へえと思ったし、僕は傘を差してその横を通り過ぎて行ったのだけれど、おもしろいなと思った。


―――――――――

 お知らせ

 突発的な、本当に激しい雨でした。


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