解放区

2011年11月23日(水) 死亡診断書と医師法20条について つづき

先日、てめえの外来日の朝に、その日来院されるはずだった患者の家族から電話がかかってきた。なかなか起きてこないので起こしに行ったら反応なく、体が冷たくなっていると。かなり動転されている様子だったし、それだけではよくわからないので、救急車を呼んでうちの病院に来院してくださいとお話した。

最終来院日は2日前だった。体中に爆弾を抱えている方だったが、最近は比較的元気に過ごされていた。ただ、何が起きてもおかしくない方ではあった。

こちらは来院されると思い、いろいろ準備して待っていたが、なかなか来られなかった。しびれを切らしていると、警察から電話がかかってきた。救急要請された後、その方は別の病院に運び込まれ、死亡が確認されたと。ついては、当院で死亡診断書が書けませんか、との電話だった。

当院には救急受け入れの電話もなかったので、救急隊の判断で他院に運び込まれたようだ。正直、話もややこしくなるので非常に困るのだ。以前の例をたちまち思い出してしまった。日中だったので断る理由もなく、当院に受け入れ要請があればすぐに引き受けるつもりでいろんな部署にも連絡していたのに。

今度はてめえが担当医のケースでもあり、勉強しなおしたことで死後診察を行えば死亡診断書を書けることを知っていたので「先方の病院から許可もらえれば、当院で死亡診断書を書きます」と返事した。

また医師法20条の件で揉めるんだろうな、と思いながら先方の病院に電話したところ、救急担当の医師は意外なほどあっさりと「全く問題ありません。何卒よろしくお願いします」と言った。先方の話しぶりからは、面倒くささというよりは、よく勉強されている印象を受けた。

「午前中は診察がありますので、午後から伺いますが、よろしいでしょうか」
「了解しました。それまで霊安室に安置してお待ちしています」

この時点で診察時間をかなりおしていたがなんとか午前中の診察を終え、てめえは先方の病院に行き、死後診察を行った。といっても、死亡確認しただけだった。すでに死後硬直が始まっていた。ご本人は、まるで眠っているような安らかな顔だった。外傷もなく、原疾患による死亡と考えられた。たくさん抱えていた爆弾のどれかが、眠っている間に突然爆発してしまったのだろう。おそらく本人はほとんど苦しんでいないと思われた。

昨日まではいつも通りで、明日病院に行くからと準備をして、夜もいつもどおりに眠ったんです。まさかこんなことになるなんて。こんなことって、あるのでしょうか。何も言わずに逝ってしまった・・・。そう奥さんは無念そうにてめえに言った。


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