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2005年03月07日(月) Factory56(樺地・跡部。Factory55の続き)


「おい、まだ、帰って・・・」
ドアを開けた跡部は言葉を失う。部室のプロジェクターに映っている小さな子供。見覚えがある、どころじゃない。あれは・・・。
「跡部って小さい頃から変わんねぇのなぁ」
宍戸が振り返る。
「偉そうなとこ」
映像が止まる。誰かがスイッチをつけて、暗くなっていた部室に光が満ちる。
「うるせぇ」
「挙式の予定、まだ決まんないのか」
「黙れ、するわけねぇだろ」
「え、しないの?お前ら」
「そんなんじゃねぇよ、バカ」
ニヤニヤしているのは宍戸だけではない。プロジェクターの前に座っていた一人一人の口元に浮かぶ笑みが、跡部の頭に血を昇らせる。
「くだらねぇことしてねぇで、さっさと帰れ。もう最終下校時間だ」
ハイハイと口々に答えながらぞろぞろ立ち上がる。眉を寄せて睨みつける跡部の肩を、忍足が通りすがりにポンと叩く。
「跡部」
「なんだ」
「ちっさい頃の方が大胆やったな」
ニヤっと笑う忍足に、跡部はぎゅっと拳を握りしめ、鋭い視線を浴びせるに止めた。
皆が出て行き、ドアがしまった後、跡部はビデオデッキの前にしゃがむ人影に近づき、うつむいている頭をバシっと叩いた。
「なんでこんなもの持ってきたんだ、お前は」
黒目がちの瞳が跡部を見上げる。
「観たいと頼まれて」
「頼まれればなんでもやんのかよ、お前は」
振り下ろした手を樺地はひょいと避け、首を振る。
「しません」
「じゃあ、なんで」
樺地が肩を竦める。
「また、からかわれるだろ。お前、俺を困らせたいのか」
跡部はうんざりした声を上げる。この時もテレビで流れた後、幼稚園でさんざんからかわれたし、親にはうんと笑われたあげく、結婚するのは無理だから、なんて諭された。
よっぽどインパクトが強かったのか、この放送を覚えている者はいまだに多く(なにしろ幼稚園から今まで持ち上がりで進学してきている生徒がほとんどの学校だ)「跡部の伝説」の一つとして笑いを提供しているらしい。
 生きているのに伝説もなにもねぇだろう
巻き戻したビデオを取り出している樺地を見据える。人の良い樺地の事だから、観たいみたいなんて誰かに(おおかた宍戸か忍足だろう)頼みこまれて、断れなかったに違いない。
「よこせ」
 立ち上がった樺地の持つビデオを奪い取ろうとして素早くかわされる。頭上高く掲げられた樺地の手に、跡部の伸ばした腕は飛びつきでもしなければ届かない。子供じゃあるまいし、馬鹿馬鹿しい。跡部は腕を下ろし、ぷいと横を向く。
「跡部さん」
おずおずと、呟かれる声に、跡部は答えず、唇を噛む。
「跡部さん」
さっきよりも傍で聞こえる声の方に、一瞬だけ目をやる。
「なんだ」
じりじり近づく存在に押されるようにして下がる跡部の足にテーブルがあたり、ひょいとそこに腰掛ける。
「あの・・・」
跡部は小さく息をつき、前に立つ樺地を見上げる。
「分かってる。お前が何言いたいのか、ぐらい」
身体を傾がせる樺地の顔に手を添える。指先に小さく感じるざらつき、あの頃にはなかった、大人になりつつある証に、跡部の胸がなにかにぐっと突き上げられるように苦しくなる。
「そんなつもりはないって言うんだろ」
寄せられる頬、引寄せた唇にキスをした。求めるように口を開き、慕うように舌を絡める。樺地が手に持ったビデオを置き、両手で跡部の背中の突起を崇めるように撫で擦った。
お互いの息が肌を滑るほどのわずかな距離をおくと、跡部は声を立てて笑った。
「お前は今の方が大胆だな、俺と違って」
樺地の顔がさっと赤くなり、離れようとするのを跡部は止める。
「別に悪りぃことじゃねぇだろう」
わざと音を立て、跡部は樺地の頬骨の上に口づける。
「まぁ、なんていうか・・・大人になっていくってことだな」
「おとな・・・」
「あぁ」
しがみつくように両手をまわし、抱き寄せた耳元にそっと呟く。
「一緒に大人になろうぜ、樺地」
樺地は何も言わないが、自分を抱く手にこめられた力がその答えだろうと跡部は思った。




★先日日記にて「笑ってこらえて(Nテレ系バラエティー)の幼稚園の旅に景吾が出ればいい」という妄想を書いたところ、ものっそ素敵な「園児のけいごとかばじin笑ってこらえて」絵をヤタカノコ様よりいただきました!ありがとうございます!
萌えました!!
ゆえにカタチにしてみました。
よろしければヤタさんへ・・・届け!この思い!★




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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