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2004年11月29日(月) Factory51(樺跡)


お前んち、今年もアレやってんの?
 俺は短く返事する。
 跡部さんの言うアレとは、うちのお母さんが毎年この時期になるとやるクリスマスライトアップのことだ。何年か前からうちの近所で流行りだして、今はうちのある一角がこの時期になるとどこもかしこも光ってたまらない。見物人がいっぱい来るようになったので、今は夕方から夜の短い時間だけ、期間もクリスマス前の一週間だけと町で決まってしまったのだけれど。
 へー、またお前も手伝わされてんだ
 俺は家で一番背が高いのでツリーを飾る係だ。
 今年はまた新しい色のライトを買ったんですよ、と俺は言う。
 去年の青いの、きれいだったな
 跡部さんは去年、手伝いにきてくれた。その前の年も来てくれた。うちでもやろうかなぁなんて言ってたけど、どうしたのか俺は知らない。
 次の休みに飾りますよ、と俺は言う。なるべく自然に聞こえればいいなぁと思う。
 土日?
 俺は頷く。
 土曜だったら俺、行ってやってもいいぜ
 ありがとうございますと言うと、跡部さんはこき使うなよと言った。
 去年もその前の年も、跡部さんは俺にライトとかリースとか渡すだけで、あとはうちの妹と遊んでたんだけど、まぁ、そういう事は言わないに限るなと俺は思ったので口を結ぶ。
 またあの辺ギラギラしてすげぇんだろうな
 跡部さんが笑う。
 本番も観に行かねぇとな。来年は観れないから、きっと
 俺は頷く。頭を振ることしかできない。跡部さんがそうやって、来年の事を口にするたびに、心に霜が降りてきてぐっと身体が寒くなる。
 来年なんてこなければいいのにな。
 跡部さんがそんな事を言わなければいいのにな。
 思ったところで跡部さんも時間も止められず、俺は凍りつき、どんどんどんどん先へ歩いてゆく、跡部さんの背中を見つめるだけ。








★次の本の予行練習みたいなもの・・・いやクリスマスの話ではないんだけど。
うちの近所にクリスマスライトアップに張り切る家があるけど、あれって本当にすごいよね・・・★




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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