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2004年12月05日(日) Factory52(日吉)


開きかけた口をすぼめるその表情に俺は苛立つんだ。
気付かなかった振りをして、背中を向けてシャツを脱ぐ。
「日吉」
身体に似合わない小さな声。おずおずとして。
俺は返事をしない。
「強くなってるよ、お前」
脱いだシャツをロッカーに投げ込んで、汗ばんだ身体をタオルで拭く。シャワー使いたいなぁと思うけど、行く気になれない。
「前よりすごい球が重いし、だから」
振り向いて、言葉を探すみたいに黙り込むそいつの顔を見つめる。
「だから、なんだよ」
「だから、その、頑張ってたなって」
「当たり前だ。あの人と試合するのに、手を抜けるほど俺はまだ強くない」
あいつの目がぱちぱち瞬く。
「鳳、お前も早く着替えろよ」
俺はそんな事さえ口にして、タオルを投げ入れて、制服を取り出す。
「1ゲーム取れたじゃん」
あいつのダラダラした話はまだそれでも続く。
「あぁ、たった1ゲーム」
0よりマシってだけだ。だからどうした。勝たなきゃそんなもの意味もない。
「でも、仕方ないよ、跡部さんは」
「仕方ないって、言うな」
振り向いて見上げた先にあるあいつの顔。心配しているような、不安そうな、強張った顔。
「俺は仕方がないなんて思わない。そんな風に諦めない。お前と一緒にするな」
あいつは肩を落とし、うんと頷く。
俺はちょっとかわいそうな気がして、ずいぶん空回りだけどそれなりに気を遣おうとしているこいつに、もっと親切にするべきなのか、そういうことができない俺は、やっぱり器量が狭いのかなぁと思い、そう思わせる鳳が、やっぱり、ムカつく。










ムカムカ中坊ライフ




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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