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2004年01月18日(日) Factory34(ジロー・跡部)


 次はお前を出すからな、と跡部が告げると、ジローは午睡の跡が残るくしゃくしゃのシャツを下にひっぱるようにして整えながら、え?と言った。
「五位決定戦にはお前が出るんだ、ジロー」
「ふぁあ」
 目をパチパチしばたかせながら呟く口調はまだ眠りの中にいるようで、おいちゃんと聞いてるのかと肩を揺らすと、間の抜けたような笑顔でへへへと笑った。
「笑うな。ジロー」
「どうして」
「バカみたいに見えるぞ」
「バッカだもん」
 開き直るんじゃねぇと睨んでも相手はふぁ〜ぁとのんびりしたあくびをしてみせるだけだ。
「知ってたよ、俺」
 ジローが眠そうに目をこする。
「さっき先生が俺にそう言ったから」
「ふん」
 ジローの口から聴きたくない言葉があるとすれば先生と言う言葉だ。誰の事を指しているかは分かっているし、その言葉にどんな気持ちが込められているか彼は分かりすぎるほど知っている。
「跡部が俺を呼べって言ったんでしょう」
「まぁな」
「忍足は?」
「今回は休み。ダブルスに専念させる」
「樺地は?」
「あいつはダブルス」
「宍戸は?」
 つかのま跡部は唇を軽く噛む。
「負けた奴は出れねぇ。知ってるだろ。あいつはレギュラー落ちだ」
 ジローが口を開く前に、今日は放課後ちゃんと来いよと言って跡部はその場を離れようとする。
「跡部」
 腕を捉まれ、振り向く。
「なんだよ」
 色素の薄い瞳が彼を見上げる。
「跡部はどうしたいの」
「勝ちたい」
 即座に言葉を返し、手を振り払った。
「お前を呼んで欲しいって頼んだのはそのためだ」
 まだ何か問いたげな視線を避けるように背を向けて歩き出す。
「跡部は、本当は、どうしたいの」
 後ろから追いかけてくる声に応えたりしない。何度聞かれても自分は同じ事を言うだろう。
 勝ちたい、勝つ、勝って進む。こんなところで躓くことなど許されない。
 悄然と肩を落とし、虚ろに視線をさまよわせ、唇を噛み締めるあいつの姿なんか思い出さない。
 言葉もかけたりしない。何も言わない、何も思わない。
 余計なことなど考えない。
 俺は俺のやるべきことをやるし、ジローはジローに与えられたことを果たせばいい。

宍戸も、あいつも、あいつだって。それがあいつに分かるなら、きっと。





★フロッピーの整理をしてたらこんなものが出てきた・・・何をどう思いついたものか記憶にないや・・・★




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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