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2003年09月06日(土) |
Factory19(樺地・跡部) |
天の底が破れて、じゃぶじゃぶ水が落ちてくる。その水は道路の上をつやつやと磨いて、あふれて溜まって流れていく。どこか遠くの方から大きな石を転がすような音が聞こえてきました。 まったく、降るなんて。天気予報のやつ ブツブツ言ってる跡部さんの右肩は雨で濡れている。お母さんの持たせてくれた折り畳みの傘は人間二人用の大きさではないからです。跡部さんは俺のカバン濡らすなよと言ったのに、はみ出した肩が濡れるのは平気だ。カバンは濡れても乾かせばいい。人は濡れると風邪をひいたりします。 傘を持つ手を横にずらしたら、邪魔だと言って、跡部さんの手が傘の端にかかる。水滴が弾けていっぱいに飛び散った。 うわ。なんだよ、もう 跡部さんはシャツの袖で顔についた雨だれをぬぐう。シャツの色が雨に濡れたところから暗く変わって、ぺったり身体に張り付いています。 ウゼェなぁ。濡れた方がマシだ、こんなの 跡部さんが離れるたびに、追いかけて、広げた傘の中に捕まえる。さっきからその繰り返しです。 おい、カバン濡れんだろ 跡部さんに手ごとぐっと押し戻されます。ちょっとの間だけ上に重なった手が冷たかったので、また傘を持つ手を伸ばした。 いいかげんにしろよ、樺地 その時、向こうの空に金色の矢が降ってくるのが見えました。ずっと上の方から斜めに折れて走り、地上に消えるまで、ほんの一瞬。あたりを照らしてまた暗くなる前に数を数え始める。50数え終わる前に空の上から巨大な太鼓の音が何台も何十台も何万台も響く。 ワッと声をあげた跡部さんに腕をつかまれた。 わりに近いな、この・・・ 全部言わないうちにまた光が見えた。跡部さんの足が止まる。跡部さんにつかまれた腕も止まる。だから身体も止まります。今度は前より少ない数で音が降って来た。跡部さんがまたワッと叫んだ。 驚いた 跡部さんが目を上に向ける。 な たしかにちょっと驚きました。 だろ? また光と音。跡部さんは今度は何も言わなかったけど、腕を掴む跡部さんの手にぎゅっと力がこめられるのが分かった。 このへんは建物がでかいからな、落ちるにしたって避雷針だ ちょっと早口で、さっきより歩くのが早い。腕を掴まれたままなので、傘がちょっと傾いている。さっきより跡部さんが濡れないのは良い。 もうすぐ着きますよと言うと、分かってると大きな声がすぐ傍で聞こえた。 全身水浸しになりたくねぇだろう、急ぐぞ その後跡部さんは笑ってんじゃねぇぞ、樺地と肘で脇腹をつついてきた。 胸の内側からとても小さな握りこぶしがトントン叩いてくるような、この気持ちも、笑いというものなのか。 跡部さんにはいろいろな事を教えてもらえる。
★夏だな夏だな夏なんだな★
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