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優秀な執事はそこにいることも感じさせず、普段は透明で、家具のように主人が必要とされる時にだけそこにいる事を思い出させる存在らしい。 その点で言えば、この家の執事は優秀とは言えない。 朝食を盆に載せ、ベッドに運んできた執事を見て彼は思う。彼の機嫌を察してか、執事は軽く目礼だけして、黙って彼の前に朝食を置いた。 その手を思い切りつかんでも、動じる気配もない。 「お前は優れた執事には程遠いな、樺地」 蔑むような響きを帯びた言葉にも、おっしゃるとおりですと執事は言葉少なに答えるだけだ。彼は眉をひそめ、唇をゆがめると、目の前に置かれた食器を薙ぎ払った。 物の壊れる、繊細で、不快な音が室内に広がる。 「気分が悪い。片付けさせろ」 吐き捨てるように呟くと、彼は執事の存在を遠ざけるように上掛けを頭の上まで引っ張りあげて、横たわる。 樺地が、苛立たしく、舌打ちの一つでもして、自分に怒りや憎しみを宿した瞳を向ければいいのに。 でもそんな事を、あの男は絶対にしない。 カチャカチャと壊れた器を片付ける音がする。メイドを呼べばすむのに。ご主人様の癇癪や気鬱は執事の胸に留めておくべきとでもいうのか。 優秀な執事は誠心誠意、主人に仕える。執事と主人、その線を踏み越える事は決してないのだろう。 執事が家具なら、 主人は偶像だな 仕え、高みに座らされ、眺められるだけ。俺が欲しいのは温かい人間の手。脈打つ心音と体温を持つ、同じ人間としての手なのに。 彼は世界を遠ざけるように、外界の脅威を避けるように身体を丸める。どこにいても、何をしていても、この存在を自分の中から追い出す事ができない。 だからこの男は、執事として優秀ではない。
★マキシマムで口走ったマスター&サーヴァント幻想によるもの。考えナッシング!な衝動。執事の口調だって知らない。まぁ遊びが一番!てなことで。個人的には執事より森番が・・・(あらあら)★
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