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2003年07月15日(火) Factory08(樺地・跡部)


 「弱ぇやつばっかだったな」
 背を向けたまま俺は言う。何の返事もないけど、奴がちゃんと聞いていることは分かっている。
 寄り道の上にまた寄り道を重ねたらおかしな所に出くわした。
 ストリートテニス場だとさ。
 テニス好きって奴等、腕に自信がないわけでもない奴等、うだうだ溜まって、お互いの世界でいきがって。 
 ちょっと不愉快でムカついて、捻ってやるのもいいかなって思った俺も、浅はかでいきがった子供そのもの。馬鹿馬鹿しいことをしたものだ。
「最後のあいつ、お前の球を返せるなんて」
 振り返って奴を見る。正視する黒々とした瞳。
「青学の2年とか言ってたな。お前と同じ学年か」
 奴は何も言わない。
「青学か。去年よりは楽しませてくれるといいけどな、樺地」
「ウッス」
 短い返答。言葉がないことには慣れている。
「練習にもならなかったな。物足りねぇの」
俺は腕を伸ばして伸びをする。奴が何を言おうが言うまいが俺は奴に語りかける。
「うちのコートで続きだ。お前も来い」
 返事の代わりに奴は背負っていた俺のバッグを手渡してくる。
 俺は携帯を取り出し、うちのマンションの管理事務所に電話して、コートが空いてるかどうか尋ねる。いつもは聞きもしないで勝手に使ってるのに。
「空いてるってよ。まぁあそこに住んでるやつでテニスやってるのなんて、俺ぐらいなもんだけど」
 手渡した俺のバッグをすぐさま肩にかける奴。自然に。
 俺はこの手があることに、いつの間にか慣れている。
「行くぞ、樺地」
「ウッス」
 かわり映えのしねぇ返事だ、それにだってもう慣れた。
 俺は歩き出す。奴は後からついてくる。俺たちは黙ったまま。

 言葉もなく、約束もなく、目にも見えないけど流れている安らかな何かに、俺は慣れてしまっていいのだろうか。







☆初登場あたり。
跡部はマンション住まい希望・・・でかくて高級なマンション。樺地は戸建がいいな☆




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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