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2004年10月30日(土) モダナイズされたオヤジの嗜好

少し前の世のオヤジと称される種類の生き物は

臭く、ダサく、身だしなみも無く、小うるさい

ただの年を取った男、と言った感じだった。

団塊の世代が壮年、老人となり、そこを越えて、今コヤジ〜オヤジへと変遷している世代が

底年齢が俺くらいの年齢で始る、いわば人口増加の一端を作った現存40前後な世代。

その世代はバブルに最も影響を受け育った世代で、金銭感覚もおかしければ

物の考え方、行動、至るところまで、おかしく取られる事が多いだろう。

逆に良く取ると、景気の良かった時代に色んな物を見たり聞いたり触れている

様々な世界を覗いている人が多い世代だ。

今、この世代が盛り上げているのが、シンデレラワインの発掘の為の高級ワイン探しや、シガーを嗜もうとする世界。

俺はシガーは2度くらいしか吸った事が無いが、別に高級品で無くとも

今、シガーはダビドフの安い物なら一本1200円から買える。

当地の某有名老舗ホテルにも先春その嗜好品を置くインショップが出来た。

そんなお店がこの片田舎で流行るとは思えないが

大人の嗜む為の嗜好が少ない当地では異色な存在とも言える。

その昔からシガー等を嗜む人は居たとは思うがこれほどまでに

雑誌の紙面に紹介されたり、都内近郊にシガーバーが出来たりと真の嗜好を

仄めかす様な事はきっと無かったと思う。

また場所によっては水煙草を貸し出し、パティオ・スペースまでも提供すると言う

ホテルなども都内には有る。

オヤジとして尚、世を愉しむ事を助長する風潮が多いのは

我々世代が管理職や雑誌編集、PR編集、等、世に誇張する役割に付き始めた事に端を発するのだと思う。

こうして余裕有る大人の嗜好や大人なりの楽しみ方と言うのを探しだし

まだまだこれから先の余生に対し愉しみを作り出していく永遠の子供オヤジが出来上がるのである。

イタリア人的発想やニュアンスをこよなく愛する俺にとってもこういう風潮が増えてくれるのはとても嬉しい。

流行万歳誰より先に的至上主義な若者と一線を画する物が何か、

それは何を言わんか、加齢する中で何を得ていくか、である。

オヤジと若者との違いを体力や若さでしか見る事が出来ないその気持ちこそが

やはり経験不足で廃退的貧困な発想で有ると思いたい。

格好を問わず見た目も問わず、おれの世話になっている先生が面白い事に

手を出し始めた。

俺が言った、ある一言から始った。

「エルメスのシャツと言うのはシャツ屋さんじゃないので、特筆は得られないけど、カルロリーバ等の高級素材を手に入れるにはエルメスのサロンですよ」

先生は、先日銀座サロンに、とても小金持ちとは思えない程の格好と身振りで行った。

先生はいかにも〜と言う姿が嫌いと言う事も有り、近所に出かけて行くような格好でどこへでも行く。

そして学会の帰りにエルメスのシャツをオーダーして帰って来た。

仮縫いを含めて約半年後納品だそうだ。

俺の一番のお勧め「オックスフォードのBD」を作る事にしたそうだ。

本当は数年前までは手織りのビッグオックスフォードを使用した、台襟が高く襟のロールの大きい物が良かったのだが

今日生地は殆どが工業制なのでピンオックスと言う小さ目のオックスになってしまったそうだ。

ただそれでもこのクラスのシャツ生地になると、何も言わなくてもロイヤルオックスと言うテカリの有る良い素材になるので、オックス見たいな汎用生地でも豪華さだけは出る。

そして袖先も時計をはめる方の袖回りだけを一周大きく作ってもらう。

おれも過去にスーツを幾つか誂えた事から学んだ事の幾つかをこうして興味を持って聞いてくれる人に話し伝える。

ただ先生に伝え忘れてしまった事が一つ。

本当は袖先に、ウェディング・フォントと言うクラシカルなゴシック文字で

名前を刺繍してもらうと格好いい。

残念ながら教えるのを忘れてしまった。

それでもこの先10年選手が出来上がる事に間違いは無い。

オックス地なので勿論思い切り良くザブザブと洗濯機にかける。

そこに意義が有る。

これこそが最良の選択でアリ最高の贅沢。

今のおれの心の嗜好はイタリア人の好みそうな風情の選択。

キビキビと走るシティ・コミューターを含め

ドレス靴を素足にトラウザー、又はジーンズ。

ニットに巻物、薄いドライバーズ・コート。

そんな『気分』を愉しむだけで充分。

晴れた日にそんな格好で自分を客観的に見る事で

自惚れた一日が有っても良いと思う。

所詮お洒落も、人へのアピールが含まれて居るのだから。

(とは言え、仕事もキチントこなしてこそ、嗜好の毎日が連続されるのであって、俺の場合出発点に留まったままだが。)









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