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2001年10月17日(水) |
灯台のひかり。(1年。その3) |
行き当たりばったりの旅。 泊まるところも、宿泊案内所にお願いして決める。 鳥羽から南に少し行った所の 海に面したホテル(というか旅館)に決めた。 案内所のおじさんが 「若い2人だから、海が見える景色のいい部屋にしてあげて」 って、旅館の人に電話でに話してたのが恥ずかしかった。
部屋に入って、しばらくのんびり過ごす。 まさに、修学旅行の自由時間状態。 思い思いの場所にごろんと横になって、テレビを見てた。
いつの間にか、眠っていた私。
さっきまで離れてテレビを見ていたやすくんは すぐ横で、小さな子どものお昼寝の添い寝をしてるみたいに 私を守るようにして眠っていた。 微妙な距離は保たれたまま。 自分からそれ以上近づくことはできなかったけど、 それはそれで、何だかとても安心できた。
「このまま、この旅行は終わっていくのかな」
一瞬、頭をよぎる。 でもそれで良かった。そんな旅が楽しかったし。
お風呂に入って、自慢の料理(案内所談)に舌鼓を打つ。 そして、食事を終えて。 テレビや、外の景色を見ながら2人でぼんやり過ごす。
ふと、何かが見えた気がして、窓の外を見つめる。 じっと見ていると、ほんの一瞬の弱い光だけど 灯台の明かりが見えることに気づいた。
「ねえ、ほら! 灯台の光だ!」
やすくんに教えるのだけど、 タイミングが合わなくて、なかなか見てもらえない。
「ほら、見えるでしょう?」
何度も何度もいうのだが、 灯台が建物や山の陰に隠れているので、 簡単に気づけない。
そうだ。
急に思い立って、テレビも部屋の電気も消して 初めてやすくんの腕を取る。
「いい?絶対見えるから。 あきらめずにずっとあの山の上を見てて」
部屋を暗くしたので、 しばらく待つと、灯台のほのかな明かりが、 海に向かって、ボウッと周りを照らすのが見えた。
「あ、見えた。見えたよ」
そうやすくんが言った。 それがすごく嬉しくて、 おでこが窓ガラスにくっつくくらい 顔を押しつけて、次の光が出てくるのを待つ。 飽きもせず、何度も、何度も。
その時。
やすくんの顔が、私のすぐ横に並んだ。 後ろから抱っこするみたいに やすくんが私を包んでくれた。
灯台のあの光とやすくんのあたたかさは、 一生忘れないと思う。
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