目口覚書
■目口覚書■
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2002年05月01日(水) 思いっきり生電話

↑というタイトルの、TVの電話相談コーナーを見るともなくつけていた。

昨日のご相談はこうだ。
相談者は22歳のお姉さん。

「19歳の弟が、学校も辞めてフリーターをしている。
本人はプロミュージシャンになりたいらしく、仲間とバンドを組み
ライブハウスにも出ているらしい。
家には祖父母と、母と、弟と私達夫婦(私は妊娠7ヶ月)で
住んでいる。

祖父が弟に ちゃんと就職するようにと諭したり母が文句をいうが
まったく聞き入れず それどころか最近暴力をふるうようになってきた」

そんなところ。
司会者は一言「甘いね」
「ミュージシャンってさ、有名になりたいだけなんでしょ?
そんなのはプロとは言わないよ」

このあたりでむかついてきたので席を立ったため
結論どんな風に話しがむいていったかは知らない。

姉は「普通にちゃんと働いて欲しい」とか言っていた。
「普通ってなんだよ」


わたしの想像だけだけど
父がいないので、祖父母と母に期待をかけられかわいがられ
でも、新しい学校には魅力を感じられなくて。

音楽への興味は異端視され、
夢を求めてバイトしているのに「正社員じゃない」という理由で
家族からはまるで能無しぐうたらのように責められる。

22歳の妊婦姉は、妙に理路整然とした話方だったから
この人の、弟の身になることより優先順位が高いものってなに?
そんなことを思ってしまった。


19歳で夢を見つけるなんて素晴らしい。
その為にバイトしているなんて素晴らしい。
それに気付く人はいない。


自分以外の家族全員が 自分を攻め立てる、居場所なんてありゃしない。
結婚して独立した姉は夫婦して家にいる。全人口自分の敵。
でもまだ19歳、給料も少ないから家を出られない。
誰一人 彼を認めてあげない。

人と同じように普通に学校卒業して
普通に就職して、普通に人生歩んで。
それを肉親であっても 自分以外の人間に望んだり
ましてや口に出すなんて どれほどエゴイズムなことか。

わたしの弟がそうだったら
わたしの息子がそうだったら

そのお姉さんの身になって考えてみる。
でもやっぱり 私は応援したい。
それで結局は夢に届かなくても、それは自分で始末つけるべきもの。


宮本亜門は、高校時代極端な登校拒否生徒だったそうな。
特に理由はなくて「行きたくない」からだった。

家に閉じこもり音楽や映画への興味ばかりつのらせた。
息子が学校へ行かないのは、おまえのせいだとばかり
父親は母親を殴り、また日本刀をもって息子を追いかけた。

殺される
母息子は逃げて、逃げた先の公園でぼんやり佇む。

「あんた、なんで学校行かないのよ」
「なんでかなぁ・・・・行きたくないんだよ」
何度も繰り返された台詞を また呟く。

そして母が言うのだ
「・・・わかった。もうあんた学校行かなくて、いい」


この瞬間、彼は堰き止められていた思いが 
すごい勢いで溶けていったという。

それまでは、学校へ行かないこと=悪いこと
自分は悪い息子として 責められ続けて責められ続けて
自分でもどうしていいかわかんなくて 自分で自分も責めて
世界中に 誰も誰も誰も味方じゃなくて

その時母親が
「わかった。もうあんた学校行かなくて、いい」
この一言が彼の存在を認知し、たった一人だけ味方ができて
これで彼は救われる。


以来、彼は高校へ行き始め、それまでストックしていた
演劇に対する思いを 本を書き演出することで放出していく。
高校時代の彼の活躍は、専門誌をもってしても伝説化している気がする。



前述の彼
「おまえの事が大切だから心配なんだ」と言われ続けてるんだろな。
言ってるほうも 本当にそう思ってると思いこんでいるだろうな。
自分達の価値観を押しつけるのやめて
今、彼がしていることを見てあげたら。

おまえ、すごいギター上手いね
ライブに行って彼を誉めてあげたら
彼は もうテーブルを拳で殴るなんてしなくなるかも。

そう思いつつ
そんな環境の中で自分の甘さを見つけるのもあなたのさだめ
心の中で 見知らぬ少年にエールを送った。


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