潔 ノ 森

2006年07月13日(木)


オニユリ (Lilium lancifolium)





■ 覚書
(緑環境と植生学 鎮守の森を地球の森に 宮脇 昭 著 第一章 文明と緑の日本列島 より)

一 自然の森

 かつて、人類が自然に与える影響が素朴で極めて限られていた時代には、むしろ、自然の森は人間活動の邪魔でさえあった。人類文明発展の歴史を見るときに、そのほとんどは、かつて森や樹林で覆われていた森林帯やその周辺域に発展している。長い時間をかけて森と対決し、火や斧や家畜の過放牧によって破壊しながら、集落、村、町、都市を発達させ、地域に根ざした固有の文化も築いてきた。しかし、人類文明四〇〇〇年から六〇〇〇年の歴史を見ると、森を破壊したときに文明は滅び、都市も強大な帝国も消滅した。地中海地方の古い文明帯を見ても、かつて栄華をきわめた都市の周りは、現在では半砂漠化しているところがほとんどである。

四 雑草から覗ける森の姿

 日本の水田雑草92種類中ウリカワとコナギを除いた90種と、現在生育している畑の雑草302種類中ネザサ類を除いたほとんどすべての種類は帰化植物である。すなわち日本の農耕地、路傍に生育している、いわゆる雑草は各種の穀物などとともに、アジア各地、また遠くヨーロッパ、中央アジア、比較的最近では南北アメリカやアフリカ、オーストラリアから入ってきた、世界中をさまよっている広布種、コスモポリタン種である。

 昭和26(1951)年から雑草生態学を研究してきた私にとって、雑草こそ最も興味深い。森林の更新には数百年もかかるが、夏の雑草は、畑でも水田でも二〜三週間で芽を出し、生育し、花を咲かせ、実を実らせて一生涯、ワンサイクルが終る。このように生育の期間が極めて短くダイナミックに生を営む雑草は、人間がせっせと草を取るからこそ、その水田や畑の主として持続的に生育できる。


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