東行庵の軒下で

2001年12月28日(金) Catch your Earth     その拾参

翼は海の青。白い衣は、空かける雲。髪は風の渡る草原、海を育てる森の緑。瞳は、生き物が歓喜の歌をつなげていく、大地の茶色。

「なぜ気付かなかったんだろう・・ボクはいつもいつも、貴方を見ていたのに」
エデンの、地球の見える丘の上で、紺碧の宇宙に浮かぶ地球を仰ぎ見ながら、彼はつぶやきました。

「いつも、私を思ってくれる天使に、私の色を焼き付けたのです・・ヒトは、余りにも身近にいるから、私の存在を時として忘れてしまいます・・あなたのように」
彼は、聞こえてくる声にじっと聞き入っています。
「人間のすむ世界は、天使やアクマのように、一色だけではありません。たくさんの色があってこそ、調和というものがあるのです。心の中にもたくさんの色が、ひしめきあっています。私の体の色みたいに」
一つの色に染まれば、というアクマの言葉を思い出しました。

「そうだね。ボクは今でも、地球は綺麗だと思うし、地球に住んでる生き物たちのことも好きだよ。・・・反対の味がひとつになってるココアみたいにさ。ココアは、[綺麗]じゃ無くて[美味しい]だったけど」



「貴方の色が、翼が、髪が、瞳が。黒くならないように。心が凍えてしまわないように」
お爺さんと、おばあさんが彼に言った言葉。
彼は、それがどういう事を示すのか、心に刻んで天使長のもとへ羽ばたいていきました。



地上に打ちつける冷たい雨に、彼の心が凍えてしまわないように。



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