東行庵の軒下で

2001年12月27日(木) その拾弐

「わしは、本の中で、あんたを見た気がする、ちょっと待ってなさい」
お爺さんは、立ち上がると、本棚へむかいました。
かれは、金色の髪に、白い翼を広げ、空に舞う天使の絵を思い浮かべました。かつて自分もそうだったように・・・

ベットのへりで、足をぶらつかせている彼に、おばあさんが小さな声で尋ねました。
「天国っていうのは、どんなところなのかしら?雲の上を歩くのかしら?」
彼はエデンを思い浮かべました。
「地上には緑。たくさん実をつけた木々があって。温かい香りがして・・良いところです。地上で例えるなら・・・・ここです」
彼が笑って答えると、おばあさんも笑いながら
「ありがとう」と言いました。

「あった、これだ」
お爺さんは、絵画の本ではなく、図鑑を手にしていました。

「ほら、ごらんなさい、これは、あんたじゃよ」

彼の開いたページには、青い星ー地球ーの写真が大きく載っていました。


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