東行庵の軒下で

2001年12月25日(火) その十

彼はその場にぺシャンと、座り込みました。
「いつかはこの星を捨てて、宇宙へ旅立つことさえ考えている人間。ヒトの存続と、星の存続。選べるものはいるのか・・・??」

彼は、うつむいたままアクマの言葉を聞いていました。

東のほうが、薄い紫色に輝き始めました。光が当たると、アクマの影は、ますます黒くなりました。
アクマは東の空を少し見て言いました。
「この世が闇なら、私も目立ちはしない。黒と白。どちらか一色に染まっていれば、ニンゲンだってどんなに楽だったろう・・・。罪の重さで地下に沈むか、お前のようにフワフワ飛ぶか・・・」
アクマは、黒くて大きな翼で体を覆うと、足のほうからスッと消えてしまいました。
「あ!ねぇ答えて!!どうして僕の羽が闇に染まるの!!こうなったのも、訳を知ってるの!!」
彼の叫びに、答えはありませんでした。


彼は青い海を越えて飛び続けました。飛び続けることで、アクマのコトバを忘れようとしているようでした。

お日様はドンドン高く上って行きます。お日様が、空の真ん中にくる頃、彼の影法師は、海から緑の大地を滑っていました。ところが・・・

彼はだんだん、翼のチカラが抜けていくのを感じました。そしてとうとう、積み上げられていたワラの中に、突っ込むように落ちていきました。


鶏が驚いて飛び回り、白い羽毛が舞い上がりました。彼の、ぼんやりした視界に、その白い羽は、たくさんの仲間達の羽に映っていました。









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