東行庵の軒下で

2001年12月21日(金) その六

水平線のかなたに、何かきらめくものが見えます。


次の瞬間、波の上を光が這うように広がって行き、いっそう輝くものが現れました。
「太陽?」
その輝きは、月の女神の青い光をはねのけ、空と海を走ります。余りのまぶしさに茶色の瞳を閉じた彼は、自分のエンジェルリングよりまぶしいかも、と思いました。
青い羽で顔を覆いながら、彼はフワリと飛びあがり、ゆっくりと目を開けてみました。目が痛くなるような、強烈な光は急にしぼみはじめていて、空の女神も少しずつ領土を取り戻しています。

海の上に現れた光。それは、太陽ではありません。
島、黄金に輝く島のようです。
それは虹色の光に包まれています。

彼は島に向かって飛びます。近づくにつれ、島には黄金に輝く塔があることに気づきました。その横にそびえているのは、黄金の城。
「黄金の島、エルドラドだ」
彼は、ドキドキしながら羽ばたきます。

耳元で「眠り」がゆっくりささやくように唄っています。ニンゲンならたちまち深い眠りに落ちてしまうでしょうが、天使の彼にそんなまやかしは効きません。
やがて「眠り」は、泣き声に変わり、「見ないで、見ないで」と叫び始めました。
その声は、金色の塔のから聞こえてくるようでした。






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