東行庵の軒下で

2001年12月19日(水) その四

黒。緑。茶。灰色。紫。紅。

魔界には、さまざまな色が、ひしめき合うようにありました。

「お前、変わった色をしているなぁ。変だなぁ」

彼はドキッとして横を見ました。
そこには、髪も翼も爪も黒い天使がいました。
−悪魔です。
彼は
「大きなお世話だ!」と、アクマに言い返しました。
アクマは笑いながら
「そうだな、色なんてカンケーねぇか。ここで必要なものは、そんなもんじゃねぇからな」
というと、薄いうぶ毛の生えたコウモリのような羽をピンと張り、彼の腕をぐいっとつかんで滑空しはじめました。

針のようなとがった屋根をいくつも持った城が、薄暗い空に向かってそびえています。天へ、剣を向けるかのように。

城の周りは、濃い緑と黒と炎のちりばめられた森が、ぐるりと取り巻いています。煙も立ち昇ってます。
どうやら、戦争のようです。

「どうして、戦争してるんだ?」
アクマは、ニヤニヤしながらこたえます。
「戦いたいからさ、殺し合いをしたいからさ」
「王様は?!何をしてるんだ??」
「魔王様がくれた自由さ。あの方は、手に入れた魔界を「治める」気などサラサラ無いのさ」
自由?
「殺す自由。でも、相手にも、殺す自由があるから、いつかは自分が殺されてしまう。魔王様は、誰よりもチカラが勝っているから、君臨してるんだぜ。・・・今のところは、な」

えっ!?
アクマの含みを持たせたその言葉に、気を取られた瞬間。
彼は、アクマにお尻を思いっきり蹴り上げられました。ぐんぐん上昇していきます。
「いってぇ〜〜〜〜〜!!!!」
「天使の尻を蹴り上げる自由だ。ケケケ」



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