東行庵の軒下で

2001年12月18日(火) その参

月にやってきました。

砂の海に、銀色の翼を持った鯨が横たわっています。

かれは、はたはたと翼を動かして、鯨に近づきました。
地球のまわりを泳いでいる鯨と、同じ鯨です。
天使たちが、地球へ降りようとするときに、時々ぶつかりそうになる、ちょっとだけ厄介な鯨です。

でも、もう、この鯨が、宇宙の海を泳ぐことは無いでしょう。

造り主のニンゲンに見放されてしまった今、自分で動けない鯨は、悠久の時間を独りぼっちで過ごすのです。

彼は、辺りを見回しました。
動いているのは、彼ひとりです。地平線のかなたは、漆黒の闇に食べられてしまったかのようです。

しばらくして、彼の青い羽が、鯨の翼の上を横切っていきました。






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