東行庵の軒下で

2001年12月16日(日) その壱

 
 楽園に住んでいる彼は、天使長様の目をぬすんでは、地球がよく見える丘の上でサボってばかりいました。
 
そんなある日、いつものように居眠りから覚めた彼は、大きく伸びをして立ち上がろうとしたときに、自分の目を疑いました。
 美しい、黄金の光を帯びていた、彼の長い真っ直ぐな髪は、夏の風が渡る草原のような緑色に。真綿のような白い翼は、深みをたたえた青色に。そして、静かな湖のような淡い色の瞳は激しさの紅にも似た、茶色に。

彼はあわてて、天使長サマに訴えました。
「サボってばかりいてゴメンナサイ。反省しています。だから・・・だから、ワタシの(色)を、返してください」
天使長は言いました。
「色で、天使の勤めをしているわけではないだろう?私は、色によって天使を分け隔てしたことは、一度も無い」
彼は、おずおずとたずねました。
「・・・ずっと、このままなのですか?これが、僕に下った罰なのですか・・?」
天使長は
「おまえがそれを罪の色と考えるのなら、きっとそうなのであろうな・・・」
と、困ったように答えました。
「それは、神サマの御意志ではないのだ。だいたい、天使の動向に、いちいち首を突っ込めるほど、神サマは暇ではないからな」


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