2007年10月05日(金) |
<映画感想>長江哀歌 |
■長江哀歌(ちょうこうエレジー)
2006年ヴェネツィア映画祭最高の金獅子賞受賞作。 風光明媚な長江で、人々が今も住み暮らす町が徐々に巨大ダム建設で破壊され、 近いうち完全に湖の底に沈んでしまう・・・。 そういった運命を持つ町にそれぞれのパートナーを探しに 遠くの省からやってきた男性と女性を中心とした、人々とのふれあいを描いた作品。 「人情ものを扱った中国映画」が好きな私はこういった映画は好きだろうと思ったのでとっても楽しみにしていました。 さて感想。
一言で言うと難しい!!(>_<;) 映画の内容が…というのではなく感想を述べるのが難しい映画でした。 まず登場人物がほとんど喋らない、人捜しに来たけど両方の尋ね人はなかなかその土地に現れないので主人公二人はその土地でただ淡々と待ってるためドラマティックな展開がない。そのうえ、劇中音楽すらないんですよ!静かすぎてびっくり(>.<)
死にゆくような静けさを持つ土地で淡々と暮らす人々がいる町に逃げた奥さんを探しに来た男性の方の主人公が、今離れたところで働いてるという奥さんがその町に帰ってくる数ヶ月先まで待つことに決め、その間建物の解体の仕事などをしながらこれまた淡々と過ごしている。 いかにもぶっきらぼうで愛想もなくて(この映画に出てくるほとんどの人がそうなんだが)人生に楽しみはあるのか?と思われるような男性なんだけど、その土地で日雇いのような仕事を毎日してるうちに仲間が出来て、友達のような感じの人が出来て(ちょっと悲しいシーンがあるけど)、最後の方にはちょっと笑顔なんかも出たりして。 やっと帰ってきた奥さんと会うのはその映画の最後の最後の方。 それまではひたすら彼の日常。 住人が立ち退いた後のビルを仲間と斧一本で(!)解体する毎日。 私達としてはコンクリ製の建物というのは重機で解体するのが当たり前の光景だと思うんだけど、ぜーーーーんぶ手作業!!というのを見て軽くカルチャーショックをおぼえましたよ私は。そうか、人というのは地道にこうして作業すればコンクリートも破壊出来るものなんだったな!と。そういった意味で中国はスゴイ。 ご飯食べて、少々の晩酌をして寝て、起きて、朝から黙々と働いてこのような大きな仕事もやってのける。本当にエネルギッシュだと思いました。
無事に会えた待ち人の奥さんとはうまくやっていけるのか解りませんが 彼が幸せになるといいなあと思いました★
もう一人の主人公の女性は、2年前にこのダム建設現場に出稼ぎに行ったきり音信不通のダンナを探しにやってきました。 仕事で忙しいんだか遊びで忙しいんだかよく解らないダンナを ダンナの友人と探し歩くんだけど、彼女もやっぱりほとんど喋らない。 そしてなぜか行く先々で持参のペットボトルに飲み物を詰め、ことあるごとに飲みまくり。のどが渇くのは病気なのか緊張の表れなのか単なる一日2リットル健康法なのか(笑)よくわかりませんが・・・。 彼女の方はやっとの事でダンナに会えて「帰ってこい」というのかと思ったら「好きな人がいるの」って・・・。 ダンナも「そうか」ってだけでたいした会話もなく別れちゃうんだけど 二人とも泣くでもなく騒ぐでもののしるでもなく、ただただ淡々。
全てが万事こんな調子で淡々と進むんだけど、二人の主人公が関係があるかというと別に何の関係もないばかりか、一瞬だけ同じ場所に居合わせただけという接点しかない。(男性の娘と道ばたで偶然話をするシーンはあるけど)
これは・・・何か事件が起きるとかいう風でもないままこんな長い時間見てるけど、もしかしてこのまま終わるんじゃないだろうか…(=o=;)と思っていたら案の定ですよ。 終わった瞬間つい「えっ!」って言っちゃった。(苦笑) 一緒の回見ていた人たちもほとんど物音がしない映画の中、 もぞもぞ足やら体やらを動かしたり、すやすや寝てみたり。 飲食禁止の映画館だったのでものを食べて紛らわすというわけにも行かず お腹も鳴らすことも出来ず、けっこう見てるのが大変だった映画でした(^_^;) 終わった後おじさまたちが「いやあ、感想が難しい映画でしたなあ」と言いながら帰って行きました。やっぱり。
つまんない、ってわけじゃなくて何がどう、って言いづらいというか。 所々突然え?ビルがロケットに?とかなにこの前衛的表現??みたいな画像が入ったりして、私にはちょっとセンスが理解出来てなかったかも知れないけど映画祭ではカトリーヌ・ドヌーブなど著名人が大絶賛したようなので もしかしたら芸術的センスのある方には深い映画なのかも・・・。
ただ私の一番の感想としてはこの映画を金獅子賞に選んだ人がすげえ!っていうのでしたかね。 ただやっぱり長江の景色はキレイです。 ビルの解体現場のシーンは感動すらします。 機会があったらぜひご覧下さい。
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