2012年10月05日(金) |
てぃるのぐ建国祭(仮)・その4 |
わたしの故郷は白花(シラハナ)だけど、わたしのお父さんはちょっと事情が違っている。わたしの黒い髪はシラハナ生まれのお母さんゆずり、青い瞳はティル・ナ・ノーグ生まれのお父さんゆずり。 お父さんのティル・ナ・ノーグでの名前はイザム・フロスト。異国から単身シラハナにやってきて、お母さんと知り合い結婚。そしてわたしが生まれたというわけ。 「イオリはお父さんが嫌いなの?」 「そういうわけじゃないけど」 わたしを育ててくれた両親だ。嫌いになるはずがない。ただ、ちょっとというか、かなり過保護という唯一の欠点があって。 「あたしから言わせれば、それってぜいたくな悩み」 一通りの事情を知っているクレイアが眉根をよせる。 「そうなのかな」 確かにぜいたくな悩みかもしれない。普段の悩みが仕事や工房のこと、家族の心配だなんて。 「クレイアは悩みってないの?」 興味本位で聞いてみると、もちろんあるわよとの返答があった。じゃあどんな悩みと尋ねると、それは内緒とのこたえ。 「人に聞くだけ聞いといてずるくない?」 「勝手にべらべらしゃべる、あんたが悪い」 なんだか理不尽な気がする。 「でもなんで、お父さんの話なんてしたの?」 「急に思い出したの」 シラハナを旅立つ前のこと。お父さんやお母さんと交わした約束のこと。なぜか、お母さんよりもお父さんの方が泣き出しそうな顔をしていたこと。 と言うよりも、実際に男泣きしてお母さんにたしなめられていたこと。 ものすごく嫌な予感がしてならないこと。
それは本当にささいなこと。
そしてそれは、数日後現実のものとなってしまう。
過去日記
2007年10月05日(金) 風邪ひいてます 2004年10月05日(火) 寓話の続き 2003年10月05日(日) クロたん再び(笑)。
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