つれづれ日記。
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2012年08月29日(水) アール・エドレッドの場合(仮)・5

 数日後。
 アール・エドレッドは海竜亭を訪れていた。約束を果たすためだ。
 冒険記はほんのさわりしかできていない。だからどうした。書物は読み手の意見があってこそ、より完成度を増していくのだ。なんども繰り返して書いていくうちに完成に近づくだろう。
 男は海竜亭に詳しいようだった。だったらここに顔を出していればそのうち姿をあらわすだろう、そうふんでのことだったが。
「こねえんだよな」
 店の中で一番安いメニューを頼みつつ、辺りを見回す。全身青ずくめの男。特徴がわかっているから容易に見つかると思っていたが男の姿はいっこうに見えない。
「なあ、ここ最近青ずくめの男って見なかった?」
 店員に尋ねると、そんな人は知らないという返事。やはり、ここ数日は姿を現してないのだろうか。
「あんたも見ただろ? 『本当にお腹が空いてたみたいですね』って笑ってたじゃないか」
 顔なじみになりつつあった自分と同世代の女性店員に尋ねると、真面目な顔で返ってきた。
「そんな人、一度も見たことありませんけど」
 冗談を言っている素振りには見えない。彼女にとっては正真正銘、あの男の存在はここにはなかった――記憶から抹消されているのだ。

『さしずめ海の道楽息子ってところかな』

 表情をくるくると変えて、人なつっこそうに笑いかけていた青ずくめの男。店員が見ていないというのなら、彼は一体なんだというのだろう。






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2004年08月29日(日) 十五少年漂流記
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