つれづれ日記。
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2012年08月28日(火) アール・エドレッドの場合(仮)・4

「俺はアール・エドレッド」
 人なつっこい笑みにつられて自らも名乗りをあげる。
「道楽息子って言ってたけど、何やってたんだ?」
 そもそもあれでは完璧な行き倒れだ。人のことは言えた義理じゃないが、それなりの事情があったのだろう。
「ここ(ティル・ナ・ノーグ)を探していろんな場所をさ迷ってたんだ。西へ東へあてのない一人旅ってところかな」
 ティル・ナ・ノーグは噂があるのは知っている。だが探し当てる場所でもさ迷う場所でもないはずだが。
「なんてね。本当はここへ来る勇気がなかっただけかな」
 さっきまでの表情が嘘だったかのように寂しげな表情を見せる。だが一瞬にして『食べないともったいない』と皿に顔を近づける。
「それで、たどり着いた感想は?」
 見ていて飽きないとはこういう奴のことをいうんだろうか。何気なく聞いてみると男の紫の瞳が揺らいだ。
「……とても、綺麗な場所だ。全てが輝いて見える」
 できれば二人で見たかった。そんなつぶやきはアールの耳に届くことはなく。しばらくは二人、黙々と食事をたいらげることとなった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ありがとう。君のおかげで助かったよ」
「俺こそごちそうさま。かえって悪いな」
 これくらい、どうってことないさと笑い握手を交わした後、二人はそれぞれの目的地に向かって歩く。
「俺、冒険記書いてるんだ。何かいいネタがあったら教えてくれよ」
 なんだったら書いた記録も読ませてやる。明るく告げると藍色の髪の男は二つ返事でうなずいた。
「わかった。今度会えたら考えとくよ」
「約束だからな!」



「……また、あえたらね」


 こうして、この日は幕を閉じた――はずだった。






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