2012年08月25日(土) |
アール・エドレッドの場合(仮)・1 |
アール・エドレッドは悩んでいた。 そもそも自分は旅行記を書くためにここ、ティル・ナ・ノーグへやってきたはずだ。しかも一般的なそれではなく、誰もが目を留めるような世界一面白いものを。 だから、このような事態はまったくもって想像していなかった。
「……返事がない。まるで屍のようだ」 目の前に転がる物体を前にそうつぶやいてみる。 藍色の髪の人間に見える。少なくとも外見上は。うつぶせに倒れているため顔はわからないが、体格からみるに自分と同じくらいの男だろう。 試しに声をかけてみても、反応はまったくない。 ここは騎士団にでも通報すべきか、それとも見て見ぬふりをすればいいのか。とりあえず持っていた剣の先でつついてみる。 つん。 つんつん。 ぴくりとも動かない。やはり屍のようだ。 「うわあっ!」 屍だと思われていた物体はむくりと起き上がった。 上半身を起こし、焦点のあってない紫の瞳を周囲にやって。 「み……」 「み?」 わけがわからず聞き直すと。 「水ください。できれば海のもの」 そう言って、男はぱたりと倒れた。
過去日記
2006年08月25日(金) 「EVER GREEN」10−2UP 2005年08月25日(木) RPGネタ? 2004年08月25日(水) 文明人への道・たぶん五回目くらい 2003年08月25日(月) DL版
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