2012年05月18日(金) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・97 |
「白花流で悪いんだけど」 呼び出したのは宿の裏。
「この封筒に書くんですの?」 準備したのは飾り気のない真っ白な封筒。
「お焚き上げ……ってわかるかな? 火をくべることで言霊が昇華して天に届くって言われているの 」 本来なら女王、そうでなくても地域の巫女姫様がやることなんだけど。残念ながらわたしは白花生まれの田舎の一市民でしかない。だけど、真似事くらいならわかる。 「少しだけ似てますわ」 火をくべて。焚き火の中に手紙の入った封筒を投げ入れる。 「再生の炎なんですのね」 ぱち、ぱち、ぱちと炎が弾ける音。本来のそれとは比べ物にならないけど、それでも真摯な気持ちは天にとど居ていると信じたい。 「お父様もいつかはこの大地に降りてくるのかしら」 消えゆく手紙の残骸を前に女の子がポツリとつぶやく。 「届くよ」 メリーベちゃんがお兄さん達と同じくらいお父さんを大好きだったこと。 頬をつたう涙を強引に拭ったあと、メリーベちゃんは炎に、天に声高らかに叫んだ。 「お父様! わたくしは元気にやっていますわ。だから安心してそこで見守っていてくださいませ!!」 それがメリーベちゃんの本心。 それがメリーベちゃんが叶えたかった願い。
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