つれづれ日記。
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2012年05月09日(水) 白花(シラハナ)への手紙(仮)・89

「ここは宿であっているのかしら」
 可愛い声とともに現れたのは長い髪を高い位置で二つに結えた女の子。ニナちゃんくらいになるのかな? 
「いらっしゃいませ。当店に何か御用がありでしょうか」
「宿ならば、今から宿泊することも可能ですわね」
 ずいぶんと可愛らしいお客様だ。
「部屋は空いておりますが、どなたかお連れの方はおありで?」
「宿泊の手続きくらい一人で充分ですわ。わたくしをだれだと思ってますの?」
 瞳をカッと見開き堂々と名乗りを上げる。
 ……ずいぶんと、大人びたお客様だった。 
「ではここに記帳をお願いします」
 おじいさんが記帳用の紙を女の子の前に広げて差し出す。女の子はペンを片手に自分の名前を書こうとして。
「お金は先に払います。これでいいでしょう?」
 袋からじゃらじゃらと硬貨を取り出す。これって確か相当な額になるんじゃ。
「こんな大金いただけませんよ」
 慌てて返そうとしても女の子は頑なに拒否する。いいから受け取りなさい、その代わりこのことは内密にと。どうやら訳ありのようだ。
「じゃあ、記帳はよろしいですからお名前だけでも教えていただければ」
 フルネームではなくて結構ですから。そういったご主人に。
「……メリーベですわ」
 女の子はそっぽを向いたままつぶやいた。









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