2012年05月06日(日) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・86 |
「イオリさんが良かったら、時々ここ(工房)に顔をのぞかせてくれると嬉しい」 帰り際、カルファーさんにそんなことを言われた。 「ユータスには才能がある。だけど、あの通りそれ以外のことには無頓着というか──、からっきしなんだ」 さしずめユータスの管理係と言ったところか。 「君のためになるかもしれないしね。一つのことに集中しているとそのうち周りが見えなくなる。お互い息抜きは必要だろう?」 言っていることはよくわからないけれど、年長者のアドバイスということで胸に留めておくことにした。 「ユータ」 今日使った呼称をさっそく使うと、言われた相手は拒絶することなく『ん』とだけつぶやいた。 「ユータはすごいんだね」 「別にすごくない。もの心つく前から同じことを繰り返しているだけだ」 「修行をして、一人前になって。いつかは自分の工房を持つの?」 いつか彼自身に聞かれた質問を口にする。なかなか返事がないのでどうしたんだろうと後ろを振り向くと彼はずっと後ろの方にいた。 「ユータ?」 「わからない」 これまたいつかのわたしと全く同じ台詞で。弟子というからには最終的に行き着くのはそこじゃないのか。 お互い似たもの同士なのかもしれない。そう思うと少しだけ親近感がわいた。 それと同時に。 「わたし、負けないから」
負けたくない。 この日、わたしに新たな目標ができた。
「……何に?」 彼のつぶやきは聞かなかったことにする。
過去日記
2011年05月06日(金) 「委員長のゆううつ。」STAGE1−12UP 2010年05月06日(木) 委員長のゆううつ。32 2006年05月06日(土) 分析結果 2005年05月06日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,54UP。 2004年05月06日(木) 仕事について。その2
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