2012年05月01日(火) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・81 |
ユータスさんが久しぶりに帰ってきたとはペルシェに出会った日の夜に聞いていた。でも、住み込みで、しかもそんな小さな頃から親元を離れて工房で暮らしているなんて知らなかった。何か事情があったんだろうか。家庭仲が悪いというわけではないだろう。ここ数日間の暮らしを見ていればよくわかる。むしろ、和気あいあいとしていたし彼だってぼーっとしてはいるものの、家族を嫌がっている様子はなかった。じゃあ、別の理由が? 「才能があるのは確かなんだけどね。ちょっと訳ありで予定よりも早く修行させることになったんだ」 苦笑しながらカルファーさんが扉を開ける。そこには探していた男子がいた。 「…………」 椅子に座って。後ろからだと全く動いていないように見える。時おり腕が動いたり、頭を軽く動かす姿が見えなければ眠っていると勘違いしていただろう。 「気になるなら近くで見てみるといいよ」 いいんですか? と尋ねると物音をたてなければ大丈夫と許可がでた。細工に集中してるんだし、邪魔するのは悪い気がする。だけど、何をしているのか気になりもする。そっと音を立てないようにして近づいて。相手の手元をのぞきこんでみた。 何かの修理なんだろうか? もともと大きくない媒体の中に、小さな部品を詰め込んでいる、ような気がする。 かちゃ、かちゃ、かちゃと金属がすれあう音が響く。音をたてている本人はというと。
いたって真剣な表情で。それはわたしが全く知らない男の子の顔だった。
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