2012年04月25日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・75 |
「今まとめるから、待っててもらえるかしら」 カターニャさんに言われるがまま、用意された椅子に座り、これまた言われるがままに出されたお茶に口をつける。施療院の時もそうだったけど、何かの成分が入ってるんだろうか。飲み終わった頃には心なしか体がしゃっきりしていた。 「植木鉢のままだと重いでしょうから苗にしてみたの。大丈夫かしら?」 丈夫そうな袋の中には緑の小さな苗がたくさん入っていた。袋を持ってみると確かに重いけど、持って帰れないほどではない。苗自体の重さよりもむしろ。 「これは図鑑ですか?」 緑の表紙の本が一緒に入っていた。ぱらぱらとめくっていれば、さっきまで目にしていた青霧草はもちろん、お店の中にはない植物まで描かれてあった。植物の下には説明らしき文章が載っているんだろうけど、知らない文字もあって簡単には解読できない。 「子どもの頃に祖父からもらったものなの。一般的な薬草について書かれているわ。私たち(エルフ)の言葉で書いてあるものもあるから難しいかもしれないけれど、良かったらもらってちょうだい」 「そんな! お祖父様との大事な思い出の品なのに!」 薬の知識は確かに必要だ。欲しくないかと言われてばもちろん欲しい。だけど、大切な思い出の品をいただいてまで勉強することではない。 「もしかして、これってイレーネ先生が……」 「お使いついでに薬学の知識について教えて欲しいですって。イオリちゃん大事にされているのね」 片目をつぶっての返答に胸が熱くなる。またきてもいいですかと聞いて、頭をしっかり下げてからその日は施療院まで戻った。そして、施療院ではリオさんから解剖学の本を借りた。
まだまだ道のりは長いけど、少しずつ頑張ろう。本を胸にそうかたく誓った。
過去日記
2010年04月25日(日) 「Sel'ge Liebe auf den Mund」UP。 2007年04月25日(水) いろいろいじってみよう 2004年04月25日(日) 第三部
|