2012年04月18日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・69 |
「長い話になりそうだね。せっかくだからトウドウの持ってきたものでもいただきながら話そうか」 「わかった。ちょいと茶の道具を借りてもいいか?」 そう思って前々から準備はしていたよ。院長先生がそう言うと、用意がいいことでとソハヤさんが肩をすくめた。 「ちょいと待ってな。すぐできる。おまえさんは持ってきたもんでも用意してな」 言われるままお土産のお菓子類を準備してもらった大皿にならべる。少しすると茶色の液体が入ったカップが人数分並べられた。 「これは?」 「白藤(しらふじ)茶。先生から頼まれていたんだ」 お茶の中央に白い花びらが浮かんでいる。口にすると、口の中にほのかな甘みが広がった。 「この香りがいいんだ。仕事の息抜きにはちょうどいい。薬の成分も入っているようだが?」 「よくわかったな。調合が難しくてヴォロフさんの知恵を借りた」 わたしが持ってきたクッキーは甘めのもの。その組み合わせは大丈夫だったのかなと心配になったけど、院長先生は気にすることなくクッキーに手をのばした。 「これはアフェールのものだね」 「わかるんですか?」 驚くと、こう見えて先生は菓子関係にはかなり明るいんだとリオさんが教えてくれた。珍しいお菓子や食べ物のことを耳にすれば足繁くかよいつけるとか。藤の湯では甘味処も店内にある。なるほど。それでソハヤさんとのつながりがあるんだ。 「さてと。君の話を聞こうか」 紅茶の一杯目を飲み終えたところで院長先生が向き直る。うながされるまま先生にこれまでのいきさつを話した。 父親がティル・ナ・ノーグ生まれで今は白花にすんでいること。医術を学びたいと単身で船にのってここまでやってきたこと。10歳の時に大病をわずらって、外国からきた医師に命を救われた話をすると、そうだったのかとリオさんやソハヤさんが軽く目をみはった。 「それと、手紙を二つあずかってきました」
過去日記
2010年04月18日(日) 委員長のゆううつ。16 2004年04月18日(日) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,9UP
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