2012年04月07日(土) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・58 |
「こりゃ完全に寝てるね」 クレイアが軽く肩をすくめる。態度枯らして、もう慣れっこのようだ。 どちらにしても、人様のお店で眠ったままというわけにもいかない。起きてくださいと何度も声をかけても「ん──」というばかりで反応はなきに等しい。かといって、昨日会ったばかりの人を強引に揺さぶるのも気が引ける。 船をこぐたびに揺れる薄茶色の髪。思い浮かべるものといえば、 「起きなさいユウタ!」 結局大声をあげてしまった。ユウタは言わずもがな、白花の家で飼っている柴犬だ。 「……ユータスのこと?」 店員さんがきょとんとした表情をする。それはそうだ。まさか犬の名前を呼んで起こされ人はそういないだろう。こほんと咳払いをすると、もう一度彼に向かって呼びかける。 「起きてください。ユータ──」 今度は控えめに体を揺さぶってみる。ちなみに家のユウタもこんな感じ。そもそも朝、顔をなめて起こしてくれることの方が多い。でも男の子の髪が揺れるだけで、一度開きかけた瞳は閉じられたままだ。 「いい加減起きんか! ユータ!!」 勢い余った故郷のカルデラなまりで叱りつけると。 「……何?」 ようやく目が開いた。 「あんた、ここに一体何しに来たの」 呆れ顔のクレイアに眉根を寄せた男の子は。 「……何しに来たんだろう?」 まだまだ夢のなかのようだった。
過去日記
2011年04月07日(木) 「クール系お題」その5 2010年04月07日(水) 委員長のゆううつ。6 2006年04月07日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,100UP 2005年04月07日(木) 「佐藤さん家の日常」学校編その7UP 2004年04月07日(水) SHFH11−6
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