2012年04月01日(日) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・53 |
「案内?」 おばさまの提案に彼が眉をひそめる。わたしも予想だにしなかったことだから、え、と食事の動作がとまってしまった。 「これも何かの縁なんだから、散歩がてら行ってらっしゃい。それとも何か用事があるの?」 「創作が──」 「なさそうね」 ユータス君の声を横に今度はわたしに向かって声をかける。 「イオリちゃんはここ(ティル・ナ・ノーグ)にきて間もないもの。知らない場所やいってみたいばしょだってあるでしょう?」 「でも、昨日に続いてお世話になるなんて──」 わたしの制止の声はおばさまのやんわりとした声にさえぎられる。 「遠慮しなくていいのよ。これは息子のためでもあるんだから」 どこがどう、息子のユータスさんの事になるんだろう。首をかしげていると二人の兄弟が説明してくれた。 「お兄ちゃん運動不足だもんね。これ以上家に閉じこもりっぱなしだったら本当にグールみたいになっちゃう」 「だよな。しかも自分の興味のあるところにしか出没しないもんな。知ってた? ティル・ナ・ノーグって兄ちゃんが思ってるよりずっと広いよ?」 なんだかひどい言いようだけど、当の本人はうーんとうなっている。おばさまの言うようにティル・ナ・ノーグは初めて訪れた異国の地だし、行ってみたい場所はたくさんある。でも、昨日であったばかりの男の子に頼むのも図々しすぎるんじゃないか。
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