2012年03月28日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮).49 |
グールっていうのは確かティル・ナ・ノーグに生息する怪物だった気がする。不幸な死を遂げてしまったもののなれの果てだって本で読んだ。別名人喰い鬼。直接目にしたことはないけれど絶対にお目にかかりたくはない。 「お「兄ちゃー ん起きてるー?」 兄弟ふたりの声に返事はない。昨日の今日だったからつかれがたまってるのかな。そう告げるとふたりに絶対違うって首を横にふられた。 「いつものことだもん」 「いつものことだよな」 そう言って強引に部屋に入っていく。 「そ、そうなのかな?」 半信半疑で後に続くと、そこには誰もいなかった。ベッドがひとつに散乱した本。見慣れないものがあたりにあふれている 。男の子の部屋に入るのはこれが初めてだけど、みんなこうなのかな。 視線をめぐらせて一歩、二歩歩いてみる。三歩目をすすめようとしてつま先が何かにぶつかる。それはどう考えても人間の感触で。 「ごめんなさい!」 あわてて飛びのくけれど、人間──男の子はびくともしない。昨日のこともあるし、もしかして打ちどころが悪かったのかな。 「あー、いた!」 そんなわたしの胸中をよそに、ヴィルドくんが男の子に近づく。 「ほら、起きて起きて」 ペシペシと頭とほおを叩くと男の子はうーんとくぐもった声をあげた。
過去日記
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