2012年03月22日(木) |
猫と魚の雨宿り(仮)・4 |
「君、さっきから妙にとげとげしくない? オレ、何かしたかな。今日が初対面だと思うけど」 「ええ。初めてですわ。でもなぜかしら。あなたを見ているとちょっかいをだしたくなりますの。食指が動くと言うべきかしら。目の前に高級なお魚をぶら下げられたみたい」 「……言っとくけどオレは食べても旨くないから」 もしかしてと以前と全く同じ問いかけをすると、これまた全く同じ返答をされた。この調子だと顔をあわせるたびに同じ会話が繰り返されそうだ。頭が痛い。 「なかなかやみませんわね」 窓の外を見ながらヤーヤがつぶやく。 「この料理を食べ終わるころにはやむよ」 「どうしてそんなことがわかりますの」 「昔、友人に教わったんだ」
――すごい。本当にやんだわ。 あなったって本当に物知りなのね――
「忘れていくってどんな感じ?」 飲み物を口にした後、聞きたかったことを質問する。 「知りませんわ。思い出せないんですもの。もしかしたらあなたとも会ったことがありますのかもね」 そう言って、大したことではないかのようにスープを口にする。 「……君は、それでいいの?」 「ええ。全て忘れることの方が、きっと私は幸せですもの」 どうやらオレと彼女の感覚はずいぶんと違うらしい。
過去日記
2006年03月22日(水) 暇な一日 2004年03月22日(月) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,8UP
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