つれづれ日記。
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2012年03月21日(水) 猫と魚の雨宿り(仮)・3

 ――忘却の呪いに囚われた者と、自らすすんで呪いを受けた者か。これも何かの縁なのかもしれないな――

 シリヤの言葉を思い出す。オレの呪いのことは置いておくとして。自分から呪いを受け入れたというシリヤの言葉に、目の前の彼女に自然と興味がわいた。
「ああ、ちょっと!」
「なんですの? ずいぶん馴れ馴れしいんですのね」
「この雨の中外に出る気かい」
 雨はひどくなってきた。このまま外へ出ればずぶ濡れになってしまうことは容易に想像できる。
「雨がやむまでそこでお茶しない?」
 あろうことか、オレのほうから天敵に声をかけてしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 そして現在にいたる。
 人間の言葉に言い換えると、オレのやった行為はナンパに分類されるらしい。
「あなたがシリヤの友達だということはわかりましたわ。でもどうして私を呼び止めましたの?」
 それはオレのほうが聞きたい。なんでオレは天敵をナンパしたあげく、同胞を差し出しているのだろう。立ち話もなんだからと立ち寄ったお店。海竜亭と言うらしい。昼間にもかかわらず店の中には人がたくさんいた。
「あなたは食べませんの?」
「食べてるよ。……うん、美味しい」
 きっと目の前の同胞もそれはもう、おいしくいただかれちゃってるんだろうね。もしオレが本性を顕(あらわ)して捕まえられたりなんかしたら、食卓に並ぶんだろうか。きっと何十人、何百人の人間のお腹を満たすことになるだろうけど。
「美味しそう」
 それ。オレに対して言ってるんじゃないよね。 






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