2012年02月22日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・39 |
「ぺるしぇ?」 聞き慣れない言葉に首をかしげる。 怪物に襲われる前に森でみたお魚もどきのことだろうか。だったら納得がいく。ふわふわ飛んでて、透き通っていた。 「あの怪物って『ペルシェ』っていうんだ」 「ペルシェを知らないのか!? !?」 なんの気なしにもらした声に男の子が目をむく。 「あの透き通るような色、魚のような造形」 そこからつらつらと。ペルシェという生き物についての講義をうけた。鳥と魚が合わさったような姿でティル・ナ・ノーグというよりもアガートラム王国に生息する生き物だということ。くわえてこのあたりだと妖精の森に多く見られるらしいということ。ぼうっとした表情とはうってかわって。一つの単語でよくこれだけ話ができるなあ。 「まさに生きる芸術。この生きる化石とも呼ぶべき生物を知らないなんて――」 そこまで言って、ふと押し黙る。視線を部屋中に向け、ニナちゃんから、わたしの方をみて一言。 「あんた誰だ?」 「お兄ちゃんっ!」 ようやくわたしの存在に気づいたらしい。あまりな物言いにニナちゃんが非難の声をあげる。 「倒れていたところを男の人とお姉さんが連れてきてくれたの。何か言うことがあるでしょ」 男の人は先に帰っちゃったけど。そう言ったニナちゃんにわけがわからないという表情の男の子。 「お礼。ちゃんと言った?」 「なんでオレがお礼を言わなきゃ――」 「い・っ・た?」 「……ありがとうございました」 頭ごなしに言いくるめられ、状況がわからないまま頭を下げる男の子。なんとなくだけど。この兄弟の力関係はよくわかった。
過去日記
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