2012年02月17日(金) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・34 |
「あなたはさっきの――」 「ユリシーズだ」 声をあげる前に名乗られた。白花からティル・ナ・ノーグについてジャジャじいちゃんと会って。二人でたちよった酒場に居合わせた男の人だ。あのときは突き放したような感じだったのに、まさか助けられるとは。 「武器も持たずにこんなとこまでお散歩とは。器が大きいんだかただの馬鹿なのか」 ひどいいいかたはさっきと変わらない。 「危ないところをありがとうございました」 それでも助けてもらったのは違いないので深々と頭を下げる。もっとも『用事のついでにたまたま見かけただけだ』って軽くあしらわれたけど。 「用事ってなんだったんですか?」 「ユニコーン」 その言葉はわたしでも知ってる。心のきれいな女の人に引きつけられるだったかな。でもなんでこんな場所にと首をかしげるユリシーズさん。男の子のほうは男の子で、ようやく立ち上がって肩や首をまわしている。さっきの言葉はそのまま彼にかえしてあげたい。 これはもしかして。 「あの」 うろんげな視線を横に、今度はこっちから名乗りをあげる。 「わたし宮本伊織……イオリ・ミヤモトって言います」 「ご丁寧にどうも。だがなのってる場合か?」 わたしだってこんな二度手間したくない。だけど、確かめたいことはある。 「ユニコーンがそばにいるって情報でここまできたんですよね」 そして、わたしの予想ははずれていなかったらしい。 「女がいればよってこないこともないけど、ここに女なんているわけ――」 わたしと彼を交互にみて、もう一度わたしの方を見て。 首をかしげてうなって、目を見開いて。 『女!?』 男性二人の声が重なる。少しまえと同じ光景が繰り広げられることになった。
過去日記
2006年02月17日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,93UP 2004年02月17日(火) 椎名の温泉日記。5
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