2012年02月07日(火) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・24 |
「確か精霊って呼ばれるものと契約して、常人にはできない奇跡を起こせる人のことを言うんですよね」 話には聞いたことがある。ただびとにはできない摩訶不思議な能力。精霊と呼ばれる人間とは異なる存在の力を借りることですごいことができるって。 「イオリちゃんは魔法使いになりたいの?」 リオさんの薄い緑色の目が細まる。 「興味はあります。でも、わたしには才能がないみたいです」 そんな不思議な力があるのなら病気や怪我をかんたんに治すことができる。そのほうがたくさんの人の力になれるしすばらしいことなんじゃないかって。 子どものころ、誰かに言われたことがある。わたしには魔法の根厳たるもの『魔力』がまったくないって。白花(シラハナ)だとみんなが魔法を使えるってわけじゃない。むしろ、魔法使いという存在を目にすることが希有だ。でも誰にでも多かれ少なかれ魔力というものが存在して、わたしにはそれがなかったから病気にかかりやすくなったらしい。 そう。本当ならわたしはここに存在すらしていなかった。そうならなかったのは通りかがりの医師がわたしを看取ってくれたから。魔法使いを呼べるほど裕福でもなくて、町医者にも助からないだろうとさじをなげられて。それでも『できる限りのことをやってみたい』ってその人は必死に看病してくれて結果わたしは命をとりとめた。本当ならすぐにでもお礼を言いたかったけどその人は旅の途中だからって名前を告げることなくいなくなってしまった。それから先はごらんのとおり。お父さんに体力をつけるという名目で武術を教わって、遠い異国の地のことを噂にきいてなかば反対を押し切る形で船にとびのって。 「奇跡でも魔法でもない『医学』という技術を学びにきたんです。ここで勉強すれば、わたしも『あの人』みたいに病気や怪我で困ってる人を助けられるんじゃないかって」 わたしの決意を赤髪の男の人はだまって聞いていた。 「それが正解。魔法って全てが万能ってわけじゃないから」 「そうなんですか?」 てっきりそうだと思ってた。 リオさんの説明によるとこうだった。魔法は確かに便利ですばらしい能力だけど、魔法使いは契約の代償として体の一部に刻印と何かを制限されるらしい。 「何かってなんなんですか?」 「うーん。何かは何かとしか言いようがないかな」
過去日記
2010年02月07日(日) 「世界観構築における100の質問」その7 2006年02月07日(火) 髪の毛談義 2005年02月07日(月) 中間報告・八回目 2004年02月07日(土) 帰宅
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