2012年02月01日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・18 |
たぶん、わたしと同じくらいの年だと思う。わたしより頭一つ分くらい小さな女の子。焦げ茶色の髪を高めの位置でひとくくりに結び、快活そうな水色の瞳がわたしとジャジャ爺ちゃんの方に向けられている。 「ジャジャ爺のお孫さん?」 「違います。わたしは――」 「ここへ来る途中で知り合ったんじゃよ。白花(シラハナ)から医術を学びにやってきたそうじゃ」 わたしの言葉を引き継いでジャジャ爺ちゃんが説明してくれる。医術を学ぶために父親のつてをたどって東の国からやってきたこと。途中でおじいちゃんと知り合いお土産を買うためにここまでやってきたこと。 「それであたしの店を紹介してくれたってわけか」 得心がいったようにうなずくと、ショーケースの中から焼き菓子を取り出す。それは、さっきも食べたアップルパイ。ただ、さっき食べたものとは違ってこっちは生地にまで細かくしたリンゴが混ざっていた。 「さっき食べたのと違う」 「それはそうさ。店の数だけ林檎の料理があると言ってもいいくらいだから」 ここでわたしは店員さんから林檎にまつわる由来を聞いた。ここ、ティル・ナ・ノーグの名産が黄金林檎であること、交易がさかんであるため観光や加工業、ひいては食文化も栄えていること。 「それで、何を買ってくれるの?」 促されて改めてショーケースの中身に視線を移す。アップルパイも美味しかったけどクッキーも捨てがたい。ちなみにジャジャじーちゃんはクッキーの詰め合わせを購入済み。話を聞けば、ここの常連さんらしい。 わたしの国も加工業はさかんだけどほとんどが美術品や工芸品だからやっぱり違う。国が違えば文化も違うって本当なんだなあと感慨にふけっていると、ふいに右手を差し出された。 「自己紹介がまだだったね。あたしはクレイア。よろしくね」
過去日記
2010年02月01日(月) 世界観構築における100の質問 その1 2007年02月01日(木) 「EVER GREEN」11−4UP 2004年02月01日(日) 名前の由来、その2
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