2012年01月31日(火) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・17 |
「すみません。こんなところまでつきあってもらっちゃって」 叔母さん夫婦の家にお邪魔するにも手土産がない。さすがに手ぶらで訪問するわけにもいかず迷っているといいところがあるとおじいちゃんが手招きしてくれた。 「そう言えば、名前も聞いてませんでしたね。わたしは宮本伊織。こっちの発音だとイオリ・ミヤモトです」 「わしゃジャガジャット。近所のもんには『ジャジャ爺』と呼ばれておるの」 銀色の髪に瞳は灰色がかった青緑。165センチのわたしよりも小柄で杖をついて歩く様はなんだか可愛らしくさえ思えてくる。 「わしも手ぶらではなんだからの、ちょうど立ち寄るところだったんじゃ。一人で買っても二人で買いに行っても同じ事じゃて」 おじいちゃんと――ジャジャ爺ちゃんと二人、たわいもない話をしながら歩いて行く。ほどなくしてたどり着いたのは一軒のお店だった。 「アフェール?」 お店の看板にはそう書かれてあった。まだ店の中に入ってないにもかかわらず、心なしか甘酸っぱいにおいが鼻腔をくすぐる。 「わしの行きつけの店の一つじゃよ」 そういって扉をあける。カララン、とベルの音とともに視界にあらわれたのは硝子のカウンターごしに見えるお菓子の数々。パイ、タルト、クッキーと食指をそそられるものばかり。さっきお店で食べてきたばかりなのに、思わずくうぅとお腹の音がなった。 「でも、どうしてリンゴのお菓子ばかりなんですか?」 確かにみんな美味しそうではあるんだけど。ほとんどがリンゴを使ったものばかり。それともそういう主旨のお店なのかしらと考えていると。 「ここの名産といえばリンゴだからね。ここは林檎菓子専門店ってわけ」 威勢のいい声と共に店の中から店員が姿をあらわした。
過去日記
2004年01月31日(土) 名前の由来
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