2012年01月28日(土) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・14 |
そう言えば名前もまだ聞いてなかった。その事実に今更ながらに気づく。 船に乗っていろんな話をしたのに。もっと話を聞きたかった―― 「どんな人だったっけ?」 記憶の糸をたどろうとして、はたと気づく。何かを話した記憶はある。でも何を? そもそもどんな容姿をしていた? 船に乗ったのは四日前。だから出会って話をしたのはそれ以降ってことになる。四日間くらいなら正確な把握はできなくてもおおよそのことは覚えられるはず。なのに、全てがあやふやで思い出せない。記憶力は人並みにはあるつもりだけど、出会った人のことに関することのみが思い出せない。
まるで、見えない何かが彼という人物を切り離そうとしているみたい。
『たぶん、この手紙を読んでるころにはオレのことを忘れてるだろう。でも気に病まないで。それが普通の人間の反応だから。 それでも呼び名がほしいなら。そうだな――どこかの海のおにーさん、なんてどうかな。カッコいいだろ? 冗談はさておき。腕輪はオレと君のお父さんからの贈り物だから、お守りとして肌身離さず身につけていてほしい』
忘れてしまったわりにはすごく脳天気そうな内容の手紙だった。要約すると、この腕輪はわたしの持ち物にしていいってことらしい。 「お守りなら仕方ないよね」 誰にともなくつぶやくと腕輪を左腕につける。 光にかざすと銀の鎖がしゃららと音をたてる。フィアナ大陸はすぐそこまできていた。
ところでこの腕輪。手紙に書いてあった通り、文字通り『二人からのお守り』として大活躍してくれることになるのだけど、それはまた別の話。
過去日記
2011年01月28日(金) 「ほのぼのお題」その10 2005年01月28日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,41UP 2004年01月28日(水) ロボットもの
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